51 drops ページ6
*
檜山「は？！振られた？！」
「ちょ、声大きいってば檜山くん、！」
バカバカバカ！と慌てて檜山くんの口を押さえれば
バカはどっちだよ、！なんて頭を一発引っ叩かれた。
檜山「ころす気かお前、。
で、なんでそんなことになってるわけ。マズいことでも言った？」
「いやごめんって、(笑)
うーん…したようなしてないような、…はは。」
休みが明けてあの日は夢だったんじゃないかと思ったけど、そんなはずもなく。
帰ってそのままテーブルに置いていたらしいイヤリングが、何よりも現実だということを示す証拠だった。
気力はないけど、大学は行かなくちゃ。
そう思ってなんとか準備をして授業に出たものの、やっぱり全然集中できずに終わってしまって
金曜日にあんなにるんるんしてたはずの俺がこんなんだから、流石に檜山くんも心配になったらしい。
話すには長くなるし、“あー、なんか俺振られたっぽいっす”とだけ言った瞬間、
冒頭のバカデカボイスが鼓膜に響いた。
へらへら力なく笑う俺を見た檜山くんが、ちょっと場所変えよ。って俺の腕を引っ張る。
連れてこられたのは、たま〜に一緒に来るカフェだった。
檜山「今日奢る。好きなの頼みなよ。」
「マジで？！じゃあ俺スペシャルパフェで(笑)」
檜山「…パフェ食う元気はあるのな」
先に頼んでたブラックコーヒーを啜る檜山くん。
その味を想像するだけで口の中が苦くなってきて、自分はいつものキャラメルラテを口の中に含んだ。
「昨日、本当に帰り際まではいい感じだったんだよ。今までで1番Aちゃんが笑ってて、たくさん話もしてくれて。」
檜山「じゃあなんで、」
「それが、…Aちゃん、やっぱり周りの人が亡くなったこと自分のせいにしてるみたいで。
俺が“大切”になるのが怖い、って。もう会わないでほしいって、言われちゃって。」
檜山「は？それって笠原、…」
「…うん、。俺、嫌われたわけではないっぽい」
むしろその逆。だけど喜べない、
目を丸くする檜山くんも、Aちゃんのこの言葉の意味がすぐ分かったらしく
大きなため息を吐いてから、自分の目の辺りを少しだけ手のひらで覆った。
Aちゃんの気持ちになればなるほど苦しくて、
どうにもやりきれない気持ちでいっぱいになる。
パフェのてっぺんから掬ったアイスクリームの甘さの中
同時に鼻を抜けたのは、ツンとした悲しさの匂いだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 662人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スイ. | 作成日時：2023年3月31日 20時
