◇学校のわいだん【変人以外は読んじゃダメ】 (ページ10)

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ちょっかい（2）ページ10

ツアーの何日目かに夕立があった。公民館に
みんなで逃げ込んで、ボロボロの絵本を各々手に取ってながめた。
オレが一人で絵本を見ていると、離れたところで笑い声が上がった。
「もう一度言ってみ？」
「ちょっ、かい！」
「ちょ、はっ、かい、だよ！」
「ちょっ、かい！！」
その子たちが開いていた本は西遊記。
「これは？」
「そんごくう」
「これは？」
「さごじょー」
「じゃ、これは？」
「ちょっ、かいっっーーー！！」
「あはははははは！！」
一番小さなホームステイ先の男の子は顔を真っ赤にして歯を食いしばっていた。
「笑うな！！」
幼過ぎて舌が回らなかったのだろう。田舎の長兄たちは容赦なく男の子をからかった。
男の子はオレに抱きついてきて、また、
「笑うな！」
と、大声を上げた。
一人っ子のオレは少しドキッとしてお兄さんらしく守ってやらなきゃと思ったと思う。
「豚だろ？ちょっかいでも猪八戒でもどっちでもいいよ」
と言うと、長兄たちはギャハハと笑って、今度は、ホントだ！豚だ！ぶーた！！ブタだな！と気がそれた。
男の子はオレをクルクルとした大きな目を潤ませながら、
「ぶたさんなの？」
と言ったから、
「うん。ぶたさんだよ？」
と答えると、えへへと笑って、ぶーたぶーた！と行進する長兄たちのところに戻って一緒に行進し始めた。

「ちょっかい！」
ギャハハとメンバーが盛り上がるのを耳にして、スコアブックから勢いよく振り返る。
「猪八戒だよ！」
「知ってますよ！オレ、ガキの頃、ちょっかいって言ってたんっす！」
「わはは！ちょっかいっつーのは、よく御幸がお前にやってるヤツだ！な？御幸！」
倉持がニヤニヤしながらオレに話を振ってきた。
沢村はとたとたとオレに駆け寄ってきて、両手を腰に当てふんぞり返った。
「御幸先輩のちょっかいは投手愛っすから！オレは全っ然気にしてませんよ！」
「気にしてない？」
「はい！」
「全然？」
「はい！！どうぞご遠慮なくちょっかい出してください！」
「ちょっかいねぇ」
全然気にしてない？腹の底が、なぜかモヤッと沸き上がる。
オレは沢村の顔にぐいと近付いて、ニヤリと笑ってちょっかい出してやった。
「豚だろ？」
沢村はみるみる赤くなって、しどろもどろと言葉にならない声を出した。
「ちょ、え？ちょ、はっ、ええ！？」
沢村が一日中、ぐるぐるとオレのことでいっぱいになればいい。