無終曲

第17話　崩れる良心 ページ44

化け物は強く、最初は手こずった。
でも、だんだんと慣れて、次第には倒す事に『楽しい』という感情が芽生え始める。
日々の鬱憤を晴らせるから。
あまりにも簡単に崩れていくから。

『私の絶対の力、気に入った？』
「ふはは、はは…！最高…」
『良かったー！で、もう帰らない？お腹空いちゃったんだけどー』

魔女も腹が空くのか。
もっと倒したいが、自らの腹もぐぅぅとなり、仕方なく帰る事にした。

家に帰ればもう10時、当然叱られた。
でも無視して食卓におかれた料理達を食べる。
ものの数分で食べ終え、着替えを持って風呂場へ直行。
風呂場までこれば、父母は諦めた。
服を脱ぎ捨て、風呂のドアを開けて中へ入り、ドアを閉める。
浴槽にまだ温かいお湯が張ってあったため、お湯に浸かる。

「…はぁぁ…」

…それにしても、うぜぇな親って。
バーダックが羨ましいぜ…今までやられてきたことを倍返しするなんて、なぁ…
……ロゼ達の親は優しくて、時に嫉妬する。
…俺が求めているのは、優しさ…？いや、違う。
そんなわけない。親なんて、養ってくれるだけの存在だ。
大人なればいずれ別れるんだ。今大事なのは将来、死ぬまで一緒に居る存在なんだ、つまり、恋人。

＿ねぇ、のぼせてきちゃったから早く浴槽から出なさいよ。

脳内にラムダの声。
いや、のぼせたならお前が出たら良いだけだろ。
俺はもっと休みたいんだが。

＿あのねぇ、契約したから私とあんたはほぼ一体化したと言っても良いぐらい縁が深まったの。だからあんたが体で体験することは私にも反映されちゃうわけ。

…厄介だな…。
仕方なく浴槽から出て、シャワーを浴びる。
シャンプーを泡立てるために髪を両手でゴシゴシとすれば

＿ちょっと！！優しくしなさいよ！！痛い！！

…はぁ…マジかよ、こんなんも…

普段使わないリンスを使わされ、いつも数分程度なのに、今日は小一時間もかかってしまった。
風呂から出て、タオルで体と髪を吹き、替えの下着と寝間着のシャツとズボンを着、脱衣場から出ようとすると

＿お肌を綺麗に保つ為に、そこにあるクリーム塗って！

ひぁぁ…いぢめだぁぁ…

脱衣場から出た俺を見て、両親と使用人達が唖然としていた。
そりゃそうだろ。
いつも髪はボッサボサなハズなのに、髪は乾かされ、綺麗にとかれていて
更に顔はいつも以上に潤っている。

「タ、ターレス……。イ、イメチェン、というものですか…？」
「違ぇよ…いろいろ訳があんだよ……」

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