命をも盗む大怪盗 【文スト】

盗み_28 ページ29

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囮と本体、其の本体をも囮にした二重の囮



奴の異能を知らぬ者なら先刻の僕のような結果が待ち望んでいただろう。



初見で僕の異能を理解し、攻撃を躱し乍ら戦略を練りそして素早い実行

薬(殺鼠剤)の力無しでは僕が負けていた


否、初めに頬を微量に掠めたのも幸運の内と云える



この怪盗、中々に手強い



僕の頬を伝う血の量が其れを物語っていた




僕以上に深く斬った頬の傷が。





〇 〇 〇





太宰side





朝早くに探偵社へ来て受像機(テレビ)を見てみれば、ポートマフィアの関連していたビルが一夜にして消えていて


慌てた様子の谷崎君が賢治君の麦藁帽子を持ったまま云った。





「 賢治君も寮に戻っていませンでした。

其れと、



＿＿＿Aさんが行方不明に成りました 」





其の場に居た全員の目が見開かれ、当惑し出す。

すると敦君が ちょっと待って下さい、と話し出した





「 じゃあAさんも組合(ギルド)に…？！ 」





" 消された " と続けないのは其の事実を受け止めたくないからだろう



だがAは賢治君と違い寮に戻っていたし現に彼女の給仕姿も私が写真に収めている。


そして、夜に部屋を抜け出した形跡もない。



つまりAは＿＿＿、





「 Aは組合に消されていない 」





私の思考をよりも早くに乱歩さんが否定の意を示した。


乱歩さんはラムネを一口、口に含んで カラン とラムネ瓶を振りながら翠の瞳を覗かせる。





「 彼女が行方不明になった原因は



＿＿＿ " ポートマフィア " だ 」





私と乱歩さん以外の一同が喫驚の声を漏らす


其れじゃあAは…、と国木田君が苦虫を噛み潰したような顔をする。



ポートマフィアに捕まった、と誰もが理解しただろう





「 助けに行きましょう！

ポートマフィアからAさんを取り戻すンです！ 」





谷崎君が救出一案を出す

だが其れは私の中で最適解とは云えない。



寧ろ之を利用するべきだと考えると…



ふと、物凄く善い案が浮かび上がった。



故に私は＿＿＿、





「 助け出す必要はないよ、谷崎君 」





「 ………え？ 」





＿＿＿彼女を助けない選択を選んだ。





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