命をも盗む大怪盗 【文スト】

盗み_29 ページ30

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中島side



賢治君や谷崎さん、ナオミさんを助けた僕は一人唸り声をあげていた。

太宰さんや乱歩さんの云う通り、組合の異能力者を倒しても彼女の異能力空間にAさんは居なかった。



でも、だとしたらAさんはポートマフィアに捕まっていることになる。


太宰さんは 大丈夫、って云ってたけどあのポートマフィアに捕まってるわけだし


幾ら大怪盗でも一人じゃ脱出は難しいんじゃ…





「 僕に何か、できることはないのかな… 」





〇 〇 〇








＿＿＿其の日、夕方 。



貴方side



光の届かない地下の座敷牢、と云ったところだろうか


殺鼠剤の効力が凄まじかったのか、長いこと寝ていたんだろう



身体中が痛い、



目を開けると私は硬い畳に寝かされていた


最も、実際に目で見たわけではない

脱走防止で両目は布のようなもので隠され、おまけに両手には鎖で繋がれてるときた。



光が届く場所と云うのは目で見なくとも分かる

＿＿＿暖かいから、

光が届くところというのは常に暖かいのを私は知っているから


冷たい場所なら当然、光も届かないだろう


畳は匂いと触った感触で誰でも分かる


壁を伝って歩けば少し錆び付いてザラザラとした鉄格子


以上の事から此処は地下の座敷牢だと推測できる。



やっていることはまるで誘拐犯と変わらないねェ…



今このヤバい現状を他人事のように考えることのできる私はもう危ないとこまで来ているのでは、とつくづく思う。



そりゃあこうもなるよ

家に帰れば散歩ついでに包帯くんに住所特定されるし、


家はマフィアの帽子くんに破壊されるし、


なんか武装探偵社とポートマフィアに狙われてるし、


後は…………………、



等々、私の喫驚と云う喫驚の悉くを短期間で引き出され過ぎた故にもう大抵の事では驚くどころか冷静に考える習慣が身に付いてしまった。



武装探偵社やらポートマフィアやらの所為で演技では命とも云える感情の一部が枯れてしまったよ、全く


これだから物騒な職場は


普通の人間と云うものが損なわれてしまうじゃあないか



なァーんてあれよあれよとこうなった過程に悪態を吐いていると、上等な革靴が冷たい床をコツコツと歩く音が一つ


此方へ向かってくるのが分かった。





「 やぁ、やっと尻尾を掴ませてくれたねえ大怪盗君


座敷牢の居心地は如何かな？ 」





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