三話目。 ページ46
「いらっしゃいませ。あら、昨日振りですね」
「こんにちは」
和かな笑顔で迎えて呉れた店員さんは、言葉通り私が来店した時に色目無く接して来た女性だ。
歳も性別も疎らだが、各々が
其れにしても今日は男性客が多い。
片隅で疑問符を浮かばせつつ、膝を折って眺めて居ると、会計をし終えて客が少し減ったのを見計らったのか、店員が不自然な静かさで歩み寄ってくる。
「貴方も御返しで?」
「御返し……と云いますと?」
「まあ、御冗談を」
くすくす笑い乍ら会話が沈んで行く。
彼女は瞬き二つすると、目を見開いて驚いた。
「ホワイトデイを意図せず此方へ!?」
心底驚いた声に此方が瞠目する。
直ぐ我に返った彼女は、口に手を当て「御免なさい」と申し訳無さそうに謝ってから、私同様、彼女の大声に驚いた客に会釈程度ではあるが頭を下げる。
気を取り直して商品陳列棚から身を乗り出し、唇の右端に手を当てて居るから、私も其方へ耳を傾ける。
「真逆、本当に?」
「ええ。社の上司に此処に来れば善い御返しが見付かると云われて」
「成程。其の方は判っていらっしゃるんですね!男性で斯く云う事を知っている方は少ないですから」
然う云い乍ら本当に嬉しそうな表情を見せた後、引き締まった真剣な好奇心を堪えた瞳が此方を見据える。
女性は、本当に斯く云うのが好きだね。
「では、今日確り覚えて行って下さい」
「勿論。聴きましょう」
私も身を乗り出し、好奇心の目を向けてみる。
何か善い事が聴ける様な気がする。
彼女が一つ咳払いをすると、「では」と切り出した。
「ホワイトデイの御返しには、意味が在るんです。猪口冷糖は無難なので、他意は無かったり寧ろ愛を示したりと、正確ではありませんが、クッキーには【友達でいましょう】等。
勿論、飴──
途中から目を瞑り、優しい微笑を堪えて語った彼女が悪戯に片目を開け、「もう判りますね」とはにかむ。
「糖菓の持つ意味は、【貴女が好き】です。素敵でしょう?」
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りく(プロフ) - 物部さん» き、期待していただけるなんて光栄です!!スランプにがっつりハマっていますが、頑張って更新します! (2016年11月28日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 続き期待しています。更新頑張って下さい! (2016年11月21日 22時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - つららっちょさん» んおおおお!そんな、そんな!嬉しいです!!ご期待に添えるよう頑張ります!!コメント有難うございます!! (2016年9月3日 21時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
つららっちょ(プロフ) - 夢主ちゃん幸せになってて良かった……!更新される度に心が踊ってました笑これからも楽しみです。応援しています! (2016年9月3日 21時) (レス) id: 134dceea58 (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - あさぎり*さん» 最初から!頑張って更新します!!コメント有難う御座いました!! (2016年9月1日 7時) (レス) id: ac95837323 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りく | 作成日時:2016年8月20日 18時