【文スト】私と貴方の。【太宰治】

生存十八日目。 ページ19

｢でも!!私は太宰を許した訳ではありませんので。探偵社の皆が残れって云って呉れるから残るの。勘違いしない様に｣

｢なッ!其れは酷く無いかい?!｣



ふい、と驚いて声を上げる太宰に顔を背ける。


_____どうせ、此の美人好きたらしに云っても仕様が無いし。
_____一寸した意趣返しだ。


自然と笑みが零れる。



｢漸と自然な笑顔に戻ったね!!｣

｢乱歩さん…!来て呉れたンですか!?｣



君は大切な社員だからね!!と笑う乱歩さん。

彼を筆頭に、太宰との遣り取りを観ていた皆が私の元へ集まって来る。
皆、安心した様に微笑って。



｢A。具合は如何だ｣

｢しゃッ、社長まで!!与謝野さんの御陰で万全です。御迷惑をお掛けしました｣



皆も迷惑掛けて後免なさい、と社長を含め、皆に腰を折って謝る。

本当に今日は、と云うか、半年間迷惑を掛けて仕舞った。
其れでも、皆は此処に居て欲しいと云って呉れた。
私は仲間に恵まれたのだ、と改めて実感する程、暖かい言葉を貰った。


______幸せだ。



然様な私に、社長も皆も、顔を上げろと云って呉れる。
顔を上げ、皆の顔を一人ひとり観る。皆が、微笑って居た(社長と国木田さんは一寸別)。

感謝もしなくては。
太宰に。…頗(すこぶ)る癪だが。



｢A。おかえり｣



与謝野さんの一言で、皆も口々におかえりと微笑う。敦君や鏡花ちゃんは、改めて宜しくね、と手を取り乍ら云った。

目頭が熱くなり、慌てて押さえる。
泣いて仕舞いたくは無いから。

目頭の熱を遣り過ごし、皆に向かって笑う。
気付けば其処には太宰もいて。もう善いや、と見て見ぬ振りをした。
然うして私は、口を開いた。



｢皆…ただいまッ!｣

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