一番にはなれない ２【💛】

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その日の夜、私はクラス全員に配られた「卒業文集」のプリントを眺めていた。

文化委員から配られたそのプリントは、どうやら学校主導ではなく、生徒主導のものらしい。
白い紙に印刷されたポップで手書き感満載の記入欄は、昔見たプロフィール帳なんかによく似ていた。高校生活の思い出ランキングTOPスリーとか、クラスのみんなへ一言、とか。
そんなプリントの片隅。「高校のきろく」と題された欄があった。各学年、何組で担任が誰先生だったかを書き込む欄に、一年生の頃の担任の名前を書き込んで....そこで、その先生....ちひろ先生の事をふと思い出した。


千羅先生の前にこの学校にいた....多分同じくらいの年齢の、社会科担当の先生。白いYシャツがよく似合う美人な女の先生だった。私はその先生の事をちーちゃん先生と呼んで、まるで実の姉のように慕っていた。

二年生に上がってからは、世界史を選択すればその先生と話せるからという理由で社会科の選択を日本史ではなく世界史にした。教科担当にもなって、休み時間に会った時は少し話したり。
千羅先生ほどではなかったけど、かなり仲良くなった私はちーちゃん先生が学校を辞める理由を一足先に教えてもらったのだ。


去年の今頃、確か冬休みの課題を職員室まで出しに行った時。「資料室まで運びたい荷物があるんだけど、手伝ってくれない？」と言われて。荷物を抱えて資料室に入った時、ちーちゃん先生は「私、三月で先生辞めちゃうんだ」って教えてくれた。

ショックを受けて「なんでですか」と聞いた私に、先生は満面の笑みで「私、結婚するんだ」って言ったんだ。

内緒だよって笑ったその先生の笑顔がすごく幸せそうで。その時はそれにつられて、馴れ初めとかプロポーズの言葉とか、友達みたいに話を聞いたっけ。春休みの間に挙式して四月からはお嫁さんだよって言って笑った先生の顔、よく覚えてる。きっと今も、幸せな結婚生活を送ってるんだろうな....。


....そこまで思い出したところで、ふとクリスマスの日の千羅先生の話を思い出した。
あの日、先生は『このままいけば、結婚....とか、するんやろうなぁとも思う。』って言ったっけ。

千羅先生も、結婚するとしたら三月なのかな。....その後も教師ではいるんだろうけど。


....もし、そうだったら。その三月が、次の三月だったとしたら....。


ふとよぎったその嫌な思考を振り切りたくて、結局その日はすぐに布団に潜った。




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