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坂田side

必死に、かき抱く。

必死に、必死に。

一方的な愛情、一方的な束縛。

君のことを、愛している。

ただこの純粋そうで純粋でない、この濁った感情に流されて、全てを許してはくれないだろうか。

もう、ほかのことはかんがえられない。

涙が出てくる。

逃げないで、見捨てないで、俺だけを愛して。

甘い考えに、甘い愛情に、一生おぼれてたいの。

何も知らないまま、笑ってくれる貴女が。

心から俺を信じて俺を疑わない貴女が、たまらなく愛おしくて、恐ろしくて、気が狂いそうになる。

「ごめんな……っ、ごめん、なぁ……」

『いっぱい泣くねえ。

いいよいいよ、スッキリするまで泣いた方がいいよ』

きっと、タイミングがいいだけ。

俺は、嘘が上手な方ではないから。

きっとバレるのは時間の問題だ。

でも、Aは頑なに俺を疑おうとはしないから。

彼女を傷つけないようにとしまってきた事実が、俺の首をゆっくりと絞めつける。

問題を後回しにすればするほど、ツケが大きくなってかえってくる。

「おれ、おれ…」

小さな、白い顔に震える手を添える。

その顔は驚くほど小さく、俺の少し大きめな手にすっぽりとおさまった。

『うん?』

不格好に震える俺の手に、自分の手をそっと重ねてくる。

まだ少し、眠そうなお兄さんそっくりの顔。

ゆっくりと微笑んで、首を少し傾けた、その可愛らしい安心しきった表情に、また涙が出てくる。

守らなければ、と勝手な庇護欲が湧くのと同時に、お前が言うな、と自責の念が湧く。

『片付けのことはもういいよ?
私、やっとくから。

最近忙しそうにしてたしね…
ゆっくり休んだ方がいいって、絶対。』

「ちが、ちがう…」

『ちがうの?

気持ち悪くなった?
トイレ行く?大丈夫?』

「っ、う、あ、ああ…」

『悠?悠?!』

がくり、と膝が折れる。

そのまま、彼女の足元にへたりこむ。

“大丈夫だよ、安心してね”と優しく声をかけてくれるAに、すがりつきたくなる。

でも俺じゃだめだ、だめなんだ。

そんな気が、してきた。

もうダメだ、耐えられない。

罪悪感に苛まれる。

Aをどんなに愛おしく思っても、その愛情にさえ後ろめたさを感じる。

中途半端にとんだアルコールの香り。

甘く、ぬるい時間が俺たちの間を過ぎていく。

俺と、俺の嘘だけを引きずって。

何も知らない彼女を、置き去りにしたまま。

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いろみず(プロフ) - うぐぅ…尊し… (2021年9月12日 21時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
いろみず(プロフ) - 弥生2nd@夢見月さん» いつ見てもお肌綺麗ですよね…特にセンラさん(( (2021年8月7日 22時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - いろみずさん» そりゃもううらたさんとセンラさんはうしさせの美肌代表ですから… (2021年8月4日 0時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
いろみず(プロフ) - 「いいな、その肌。くれ。」で盛大に吹いた(( (2021年8月2日 10時) (レス) id: be92b83ba0 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - いろみずさん» 全然返信できてなくてごめんね…また読みに来てくれて嬉しい!さかたん応援隊が増えたなあ… (2021年7月10日 21時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2020年11月29日 1時

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