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『本当に、気にしてないって。
センラくんのせいだなんて思ってないよ。
いつも感謝してるよ。
すごく頼りにしてるし。
だから、ね、泣かないで…』
嘘ではなく、本心だった。
コンクール入賞を一緒に喜んでくれたのも、私のモチベーションが下がった時に応援してくれたのも、全部センラくんだ。
センラくんは確かに絵は描かないけど、もう私はセンラくんなしでは絵が描けないかもしれない。
本当に彼のことは頼りにしてるけど。
あなたのことが好きです、とまでは言えない私。
なのに、涙がおさまったらしいセンラくんは珍しく拗ねたような口調で言った。
「………それは嬉しいけど、ちょっと今のは、ショックやったで。
頼りにしてるんやったら、なおさら言ってくれてもよかったやん…」
『…それに関してはほんとにごめん……』
「次からはちゃんと言ってな。
俺絡みで女子が騒いでんの俺も嫌やし」
『あ、うん、そうだね』
それもそうかと納得する。
自分絡みで女子が人を呼び出したり呼び出されたりするのは気分のいいことではないだろう。
『というか、なんでそんなに怒ったの?』
「その、告白してきた奴がな、しつこかってんよ。
いや別にな?
告白してくれるんは嬉しいんやで?
普通にそれはありがたいと思うんやけど…
でもさ、あいつ俺の好きな子に文句つけてきてんよ」
センラくんは本当に悔しそうな顔で言う。
好きな子、いるんだ。
心のどこかがキリキリと痛む。
「私の方が可愛いのに、とかそんなん俺の価値観やん。
その後もその子は地味やなんや喚いててさ…
___なんかさ、俺のせいでその子が悪く言われたんが、悔しくて、許せんくて…」
“それで、もう笑ってられへんくなっちゃって怒鳴って逃げてきたんよ”と、センラくんは下手くそな笑顔をうかべた。
口元は笑っているのに、目は悲しそうだった。
悲しそうに目を伏せるセンラくんの頭に手を伸ばす。
さらさらの髪の感触に驚いて手を引っ込めてしまいそうになるけど、恐る恐る触れる。
これぐらいしてもいいよね…?
『大丈夫だよ。
センラくんのせいじゃないよ』
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弥生2nd@夢見月(プロフ) - 結月。さん» 返信遅れて申し訳ございません!!めちゃくちゃ嬉しいです……もしよかったらどんどんリクエストもお願いします! (5月13日 21時) (レス) id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
結月。(プロフ) - 初めまして、弥生様のお話を全て夢中になって読んでおりました…。凄く大好きなお話ばかりで、読んでいてとても幸せになりました;;素敵なお話を書いて下さってありがとうございます。『一般人シリーズ』もこちらの短編小説も大好きです。これから応援しております◎ (2023年5月2日 13時) (レス) id: 5fcf3e0281 (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 紫陽花さん» 返信遅くなってすみません!!ぜひ書かせて頂きたいです!素敵な設定をありがとうございます! (2023年1月11日 0時) (レス) @page46 id: 98422f84d7 (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花(プロフ) - urtさんとsrr先生が話してて、夢主の元カレの浮気(もしくはどこからが浮気なのか)について話してて、それをたまたま聞いた夢主がurtが浮気してる(もしくはしよう)と勘違いしてるシチュを見たいです。 (2022年11月20日 1時) (レス) @page39 id: a2f685055b (このIDを非表示/違反報告)
弥生2nd@夢見月(プロフ) - 未夜さん» めっっちゃ嬉しいですありがとうございます………個人的に坂田さんの話は満足の出来だったというかこの話を思いついてから「シリーズにしちゃおう!」となったのでそう言ってくださるとめちゃくちゃ励みになります… (2022年3月19日 0時) (レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2020年6月6日 23時