箒星 【Sho Sakurai】 第１章

25. とんだ偽天使 ＜S side＞ ページ25

何か言わなくちゃって。
思えば思うほど全然
形になんなくて。

一方の彼女はまさに
「冷静沈着」そのもので。

その視線の中。やっとの思いで
ふりしぼった言葉。



「そ...それってどういう意...」

「私は。結婚相手として
しかるべき好条件の人と出会うため
合コンに参加してます。

櫻井さんは。確かに
親切でいい人ですけど。
私にとって”イイ条件の人”じゃない。

あなたは。トータル４３点なんです。

ですからおわかりになりましたら
どうぞここからお引き取りください」




そう言いきった北田さんは。
あの夜と同じまぶしいくらいの
天使スマイルを俺に向けてくる。




まさに。「拒絶の笑顔」ってこの事だ。






...いいや。天使なんかじゃねぇよ。

とんだ偽天使だ。



しかも。何だよ。４３点って？！




...ふざけんな。

勝手な物差しで。
勝手に採点してんじゃねぇーよっ！！









その瞬間。ムカッときて。

胸からこみ上げてくる怒りを
もうおさえることできなかった。




「じょっ、冗談じゃねぇーよっ(怒)
俺は！君にそんなこと言われる
筋合いもねぇし
　 点数つけられる筋合いも」

「ないですよね？ 私も。
職場であなたにどなられる筋合い
全くないですから」

「なっ..★」





ああいえばこういう。
少しもひるまねぇ確固とした態度。



なんて女っ？？！！
ありえねぇーよっ(怒)
見たこともねぇーしっ！






さっきまで頭の中で築き上げてた
清らかな北田さん像が。

俺をあざ笑うかのように
ガラガラと派手な音を立てて
崩れていく。



「ご利用ありがとうございました。
それでは失礼いたします」



茫然として。もうそれ以上
言葉の出なくなった俺に。

北田さんは最後に一言だけ告げ。
丁寧に一礼してから
奥へとひっこんでいった。


入れ替わりにカウンターに出てきた
同僚らしき女性が探るように俺を
見つめ始めたのに気がついて。

ハッと我に返って。

俺もあわてて軽く一礼してから
その場を離れる。




スタッフさんたちの所に戻ってからも。
覚めやらぬ変な興奮と憤り。

収まることのない胸のモヤモヤと
現実を受け入れられない動揺。






...嘘だろ...？！


あれが。ホントの
北田さんだっつーのっ？！



...４３点って。
何なんだよ...っっ？！(怒)





家に帰ってからも。
そのショックは一向に
おさまりっこなかった。

26. 思いだすひと→←24. はがれた皮 ＜S side＞

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す