箒星 【Sho Sakurai】 第１章

24. はがれた皮 ＜S side＞ ページ24

「だ、だよねっ、
こっちこそごめんなさいっ！
....じゃあ。いつなら大丈夫かな？
　 教えてもらえると助かります(^^)」

「あ....その」

「俺、今月はゆるいスケジュールなので
　 北田さんのシフトに合わせて
日にち決めましょうか？」

「あの、だからっ」



少し声を荒げた北田さんに気付いて。
俺も言葉を止める。



やべ....強引すぎた？
怒ったかな....？






北田さんは。
まっすぐに俺を見つめながら口を開く。



「私、櫻井さんとは食事には行きません。
どうぞもうお引き取りください。
こんな所で噂にでもなったら」





...あ....俺のこと
考えてくれて...？






なんて淡い期待。
次の瞬間真っ二つに引き裂かれる。





「私、困るんです。
　 今週末合コン予定のパイロットの方々に
　 彼氏じゃないかとか。
アイドルと遊んでるんじゃないかとか
　 誤解されたら迷惑なんです。
イメージダウンはなはだしいですから」




...え...





自分の耳を疑う。
聞き間違い。じゃねぇよな？


いや。確かに聞こえた。
”迷惑”って。
"イメージダウン”って...？




衝撃的すぎて。
とたん、ぐるぐると回り出す頭ん中。




「あ...あの...
北田さん、だよね...？」

「はい。そうですけど？」

「こないだ会った...
北田さん、だよね...？」

「はい。あ。こないだは
合コン用の私でしたけど」

「...は、はぁ...っ？！」




びっくりしすぎて。
信じらんなくて。
もう言葉になんねぇの。




...う、嘘だろ...？
これ、夢？！


目の前の彼女は。
本当にあの日の北田さんと
同一人物なのかよ...？！





口ぽかんと開けたまま。
驚きふためいている俺に北田さんは。
顔色一つ変えずにきっぱりと答えていく。

その瞳は。確かにあの夜よりも
しっかりとした意思を
たたえていたように見えた。



「あれは合コン用の顔です。

もし櫻井さんがあの時の私を
ホントの私だと思って
誘ってくださってるなら
　 それは大きな誤解です。

それに。私、アイドルの方と
お付き合いする気は
ありませんから。」

「...えっ、いや、俺はただ」

「”友達として”ですか？
だとしたらそれも大きな間違いです。
私にはそんな無益な道草をしている
時間はないです」



滔々と流れて。俺の耳に入って
通り過ぎていく彼女の言葉。



ちょっ...待っ...
意味わかんねぇ...

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