* 11/2 修正 ページ16
.
リリイベ最終日。あと一人だとスタッフに耳打ちをされた後に入ってきたその子に目を見開く。
「センラさん、猫ちゃんに私と同じ名前付けました?」
イタズラに笑う彼女に意味が分からなかった。いつものように名前を聞いて、何か言いたいことある?そう聞こうと思っていたのに、そんな物は一瞬で吹き飛んだ。どうして?そんな疑問ばかり浮かんだが久しぶりに会えたことへの嬉しさでそんな疑問を投げかけるのはやめた。
「バレてしまったなぁ……」
そう呟くとぎゅっと握る手に力が込められた。何から話していいか、何を話していいかわからずにただひたすらに無言の時間が続いた。そして、お時間と言われたのに思わず手を引いてしまった。驚いた彼女の顔と近くで大きな音を立ててしまった時にAがしてた顔が重なった。
「あの!」「あのさ、」
2人の声が重なり、思わず時が止まったように固まってしまう。しかしそれもほんの数秒で、先にどうぞと声をかけると彼女は頷き、そっと口を開く。
「私が、……もし私が、あなたの飼い猫だったって言ったら信じますか?」
そんな言葉に再び思考が止まる。そんなファンタジーが有り得る?有り得ていい?
「……出たところで、待ってて」
彼女の問いかけの答えでは無い言葉が口をついて出たことに自分でも驚いたが、なんだかここで引き止めないと一生会えないような、そんな気がしてしまった。それに、その言葉の意味を知りたくて。
───────
─────
───
早足で裏口から出て彼女が出てきたであろう入口へ向かうとそわそわと前髪を直しながら待つ彼女がいた。それをじっと見つめているとぱっと彼女がこちらに気づき向かってきた。
「えっと、お疲れ様です……?」
「……あ、ありがとう?」
よくわかんない会話を交わしていると握手会良かったねぇー!なんて声が聞こえてきて、あわてて彼女の手を引っ張り狭い路地へと身を潜めた。
「ごめん、見つかったら面倒やから」
そんな言葉に彼女はただ無言で何度も頷いていた。そんな様子に少し悪戯心が擽られ、そっとその手を引いて腕の中に閉じ込めるとひゃーー、なんてよく分からない小さな悲鳴が零れてきた。
「行こか」
何処に!?という彼女の悲鳴は聞こえないふりをしてその路地を抜けて、いつもの行きつけの居酒屋へと逃げ込んだ。
138人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ