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Aside
「俺さ…ホントはこんな年下を好きになるなんて認めたくなかった。でも、Aが好き。ずっと前から好きだった。きっと、初めて出会ったあの時から。」
そんなことを告げた彼の表情は今までに見たことないくらいに優しい顔をしていた。私の大好きな彼だ。私も好きだよって言いたいのに、視界が滲んで喉が詰まるような感覚がして、言葉が出ない。でも、それでも、彼に私の気持ちを伝えたくて必死に声を絞り出した。
『私も、ずっとうらたさんのことが好きだった。だから…歌い手になった時ファンの子に取られちゃったみたいで…すごい嫌で堪らなくて』
それ以上は言葉に出来なかった。だって、彼が耐えられないとでも言うように私の手を勢いよく引っ張って私を腕の中に閉じ込めたから。
『うらたさん?』
「やだ」
私がそうやって彼の名を呼ぶと彼は小さい子が駄々をこねるような、そんな口調で小さく言い放った。
「前みたいに呼んでよ」
そんなことを言われるとは思ってもみなくて、思わず体が強ばった。だって、あの呼び方はもう何年もしていない。今更、あの呼び方は恥ずかしい。でも、そんな捨てられた子犬のような表情をされてしまってはダメなんて言えない。きっとそれは彼だってわかってるはずだ。この確信犯め
『……わっくん』
零れた声はもう聞こえるかどうかもわからないくらいの声量だった。けれど、彼の耳にはちゃんと届いたようで彼は満足気にはにかんだ。けれど、その反応が堪らなく恥ずかしくて、思わず彼の胸に顔を埋めた。ばか、なんて意味のわからない言葉を零しながら。
「─────A、ちょっと目瞑ってて」
暫く沈黙が続いた後、彼はそう言って私の目を閉じさせた。───も、もしかしてキス!?なんて思ってしまって口から心臓が出てしまうんじゃないか、ってくらいに胸が高鳴っている。けど、いつまでも期待した事は訪れなくて、暫くして扉の開閉音がした。そして、唇に何かがむに、っと当たった。……むに?
「開けていいよ」
目を開けたのは彼の言葉と同時だった。目の前にはドアップのやまだぬきらしきもの。驚いて思わず後ずさった。そして、彼はそんな私を軽く笑ってやまだぬきを差し出した。
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潮田 陽菜(プロフ) - はっかさん» コメントありがとうございます!!感想書いて頂けるなんて嬉しいです(><)いつもありがとうございます!!次回作も頑張るのでよろしくお願いします!! (2019年10月29日 15時) (レス) id: 71e4183107 (このIDを非表示/違反報告)
はっか(プロフ) - 遅くなりましたが完結おめでとうございます!!細かい感想は後ほど送り付けますがとりあえずこれだけ言わせて頂きます。好き。これからも無理しない程度に頑張ってください! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 3cb0d82f4b (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - Nacoさん» コメントありがとうございます!更新頑張りますのでこれからも何卒よろしくお願いします (2019年3月1日 22時) (レス) id: b5c447886f (このIDを非表示/違反報告)
Naco - さっそく読みに来ちゃいました!!とても、私好みのお話で面白いしとてもドキドキしちゃいました(*´-`*)これからも更新頑張って下さいね!! (2019年2月24日 21時) (レス) id: 6c2e9c4715 (このIDを非表示/違反報告)
潮田 陽菜(プロフ) - 陽音。こたぬきさん» そう言っていただけて嬉しいです!文才あるだなんて言っていただけて光栄ですありがとうございます(,,・ω・,,)更新頑張りますので何卒よろしくお願いします! (2019年1月26日 23時) (レス) id: b5c447886f (このIDを非表示/違反報告)
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