いや、俺男なんやけども。【稲荷崎】【男主】 (ページ6)

今日:35 hit、昨日:234 hit、合計:95,343 hit

5話ページ6

「…こんなところで何やっとるん？」

『！！…ぁ、えと…自分宮に誘われて、』

「そか、見学なら上やな、行き方は…まぁわかるか。」

…多分バレー部であろう人に声をかけられ、その視線の先を見れば2階はファンであろう女の子たちで埋まっていた。

『…あの、あそこやないとダメですか…？』

きっとあの中には同じクラスの女の子もいるだろうし教室で目立ったばかりだったからあんまあそこに行きたくないというのが本音だった。

「…まぁ、ええよ、あいつらの知り合いなら特に邪魔もせんやろうし。ベンチで見とるか？」

『…あ、いえ…ここで大丈夫です』

ベンチにいることを勧められたがそうなってはかえって目立ってしまうためお断りした。

侑「…あっ、北さん！」

北「やっと来たな、友達1人こんなとこほっぽって随分とゆっくりの登場やなぁ。」

侑「…ヒィ！」

先程とは打って変わった雰囲気の北さんと呼ばれた先輩は、あっちを向いていて顔は見えないが物凄い圧を放っていた。

北「…まぁええわ、さっさと中入り。」

2年「っす！」

ぞろぞろと2年の連中が体育館へ入っていけば同時に聞こえてくる黄色い歓声。

良くもまぁこんな声の中で練習ができるものだ。

北「ごめんな、喧しくて。」

『…あっ、いえ、全然』

北「北信介、3年で、バレー部の主将や。よろしゅう」

『主将…あ、橘Aです、お願いします』

軽く自己紹介と挨拶を済ませば北さんも体育館へ入っていった。

ドンッ

ボールが床に叩き付けられる音がやけに大きく聞こえる気がする。

「ナイスキー！」

「｢きゃぁぁーー！！！」｣

アップを済ませて試合形式の練習をしている彼らをぼーっと眺めていた。

点を決める度上がる歓声がこだましながらも、宮侑の綺麗なセットアップをぼんやりと眺めていた。

治「…あﾞ」

宮治のサーブ。片割れに煽られ力んだのかボールはコートからは大きく外れこっちへ向かってくる。

侑「＿＿橘くん、危ない！！！」

やけに大きく聞こえる声。
こっち側のコートにいる部員が駆け寄ってくるのが見えたが追いつきそうもなかった。

ボールはまっすぐ自分の所へ向かってきており、避けるにはもう遅い。

トンッ

ボールが腕に当たる音がやけに静かな体育館に響いた。

バレー部だけでなく観客までもが驚いた顔で此方を見ていた。

『……やってもうた、』