５３、最弱の夜兎 ページ12
沖田くんにだったら、話してもいいだろうか。
「幼少期、最弱の夜兎。それが私の呼び名だった。
人か夜兎か中途半端に生きてきたから、この有り様。
どちらかを捨てなきゃいけないのに。
…それが未だに出来なくて」
人の身で夜兎の力を酷使すれば、この右足を筆頭にいつか身体の限界が来る。
だが、人の道理を抱え夜兎として力を以前の様に使い続ければ精神の限界が訪れる。
母は夜兎として生きてきた。父は人間として。
なら私は？
「じっくり考えりゃいいんじゃねーの。
ずっと夜兎として生きてきたわけだろィ？なら、今は人間として生きてんじゃねェか」
沖田くんらしい答えだった。
確かにそうだ。私は人間だった父の故郷に今、こうして暮らしてる。
何が正しいかは自分で選ばなきゃ、絶対後悔する。
「そんで覚えてんだろうな。
中途半端が完璧になったら再戦するって」
彼の言う中途半端とは、前編１５話参照のあの中途半端の事だろう。
「覚えてる…けど、片足折れてる状態で！？」
「治ったらに決まってんだろ、馬鹿か」
「うん、戦ってみたい。沖田と全力で」
「…じゃあ、退院後の予定空けといて下せェ」
そう言って病室を出て行った。
あれ。何しに来たんだ、あの人。
お見舞いか…もしかして責任感じてるのかな。
私が勝手にした事なのに。
でも…だとしたら。嬉しいや。
そして廊下側の机の上には、ピンクの薔薇が一本と別々に包まれた赤い薔薇が三本あった。
花に詳しくないけど、お見舞いには珍しい気がする。
お妙ちゃんからかな、今日来てくれたし。
・
「知らないわ。私が持ってきたのは卵焼きだけよ。
で、どうだったかしら。出汁巻きには自信がなくて」
逆に他のはあったのかよ！
言えない。お見舞いはお見舞いでも、猛毒物をお見舞いしに来ただけだよね、だなんて。
「お、おお美味しかった」
言えないよ。露出狂ゴリラに横流ししたなんて。
『やったァア！！出汁巻きだなんてレアだなァア！
よし、家宝にしよう』
『お願いだから食べてぇえ！！証拠隠滅してぇえ！』
すっげェ喜んでて、良い事してるのか悪い事してるのか分からなくなった。
「誰が持ってきたんだろう」
「…ふふッ。あの人ったら」
「心当たりあるの？」
「えぇ少し。まず銀さん達はあり得ない。
だとすると他にお見舞いに来たのは？」
「じゃあ…マヨ方さんか沖田くん？」
ありえない。
ありえないよ、お妙ちゃん。
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千歌(プロフ) - ☆さん» 大好きだなんて物凄く嬉しい限りです！！これからは少しずつでも更新頑張ります、ありがとうございます！ (2021年8月22日 23時) (
レス) id: 0adde8f269 (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - おかえりなさい！ずっとこの作品が大好きです。作者様のペースで無理なさらず更新してくださいね。 (2021年8月20日 22時) (レス) id: 9c28cba465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千歌 | 作成日時：2020年12月6日 16時
