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第2話「仕事の始まり」 ページ3

風鈴の音。
ほのかに香る蚊取り線香の匂い。

夏がやってきた。



「ったく、今年は猛暑だな」



店主さんはでかいうちわで汗ばんだ体を扇ぐ。
私はその隣で肩を並べ店主の着物を握り共に歩く。

日差しが差し込んで目が見えない。
それが私の欠点。
この体で生まれた唯一の欠点。



「喉乾いたか?ラムネ買ってやるぞ」

「ううん、いらない」



昼にやっているで店を歩き、店主の声に私は首を横に振る。
でも店主はそんな私の声が聞こえていないかのように、
「おっさん、ラムネ二つ」なんて言って私にラムネをもたせた。

私は手にある冷たいガラスの感触に眉を寄せた。
いらないって言ったのに、どうして買うんだろう。
手を動かせばカラカラとラムネの中に入っているガラスの玉が動く。



「ほら、開けてやるよ」



ぷしゅっ、なんて音を開けてラムネが開いた音。
手にはラムネが溢れたのか、冷たい液体が私の手を伝った。
「落とすなよ」なんて私にくれたラムネ。

私は仕方なくそのラムネを飲んだ。
しゅわしゅわする感覚が喉を通り胃の中に通ったのが分かった。
飲んでいたらガラス玉が飲み口に引っかかりラムネが出なくなる。
それがうざったく、まだ半分にも行ってないラムネを店主にあげた。



「ん?」

「いらない」



店主は「でも喉乾いてたんだろ?」なんて言って私のラムネを受け取る。
確かに、なんだか喉が潤った気がする。

言われた気づいた。
私、喉乾いてたんだ。



「結構飲んでるじゃねえか、お前は本当不器用なやつだな」



ケラケラ笑ってラムネを飲んだ店主。
私、半分にも行ってないラムネを渡したんだけれど。
もしかしてそれ以上飲んでいたかな?
目が見えないから分かんないや。




「さ、もう夕方だ。そろそろ店に戻るか。
今日はどんな奴が来るかねえ」

「…」




店主はそう言ってゆっくり歩いてくれる。
私は浴衣の袖を掴みながら進む。

今日は人多いかな。
どちらにせよ、


私はただ座って置くだけ。
今日も、また明日も。


いつになったら、あの人は私を迎えに来るのだろうか。

第3話「人が人を」→←第1話「熟した頃」



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Karen1213(プロフ) - すっごく面白いです!もっと鬼舞辻無惨との絡みがみたいです!!更新楽しみにしてます! (2019年6月30日 14時) (レス) id: 23cf084fd5 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - ナ子。さん» ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年5月14日 20時) (レス) id: 855de7cb2f (このIDを非表示/違反報告)
ナ子。(プロフ) - 読ませていただきました。面白い設定なので面白く読ませていただきました('ω') (2019年5月14日 18時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - Airさん» ありがとうございます!そう言ってもらえると嬉しいです! (2019年5月13日 19時) (レス) id: 855de7cb2f (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - もうふさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月13日 19時) (レス) id: 855de7cb2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:勿忘草 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月12日 9時

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