検索窓
今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:50,216 hit

第1話「熟した頃」 ページ2

ーーー見世物小屋へ働く気はあるか?


齢10歳も満たない頃。
私が見世物小屋の店主と出会った日だった。
その日は雪がしんしんと降り、親の血が雪に染みていた。

涙を一筋も流さない私に店主は言った。
『お前は親のために涙を流せない、可哀想な子』なんて。

見世物小屋で働く。
その言葉に私は二言だ。

『はい、働かせてください』

親を雪の上に放ったまま店主に手を引かれ、
寒空の下、私はただ手を引かれた。


店主が親を殺しても、私はなぜかまだ生きていかなければならない、
そんな気がした。


夏には出店として見世物小屋に出された。
私はただ座っておけばいい。
そう言われた。

綺麗な着物。
藁の上に寝転がって穴の空いた壁を見つめた。
この向こうには沢山の人がいる。

“覗き穴”
金を払えば穴が開いた壁から白子が観れる。
その穴からはギョロギョロと瞳が見える。

齢11歳では事件が起きた。
私観たさに溢れんばかりの人だかりで、
子供が大人に押しつぶされ亡くなったそうだ。

なんと悲しい報だろう。
親はどう思うだろうか。

私を恨むだろうか、それとも潰した大人を恨むだろうか。

どちらにせよ見世物小屋が無ければ起こらなかった事故だ。
だがやはり涙は流れない。



『なんと罪深き子だ』



ある男が訪ねてきた。
白い帽子をして大正に気触れた男だった。

店裏から潜り込んだのだろうか。
私はその男をボーと見つめれば男は笑みを浮かべた。



『お前が熟した時にまた来よう』



なんとも変な男だった。
でもなぜか毎年の夏祭りはいつものように、
あの男が現れることを望んでいるのだ。



「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!!」



また威勢のいい口上が屋台一帯に響き渡る。
あれから7年。



また、夏が始まった。

第2話「仕事の始まり」→←設定



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (192 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
348人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼殺隊 , 女主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Karen1213(プロフ) - すっごく面白いです!もっと鬼舞辻無惨との絡みがみたいです!!更新楽しみにしてます! (2019年6月30日 14時) (レス) id: 23cf084fd5 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - ナ子。さん» ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年5月14日 20時) (レス) id: 855de7cb2f (このIDを非表示/違反報告)
ナ子。(プロフ) - 読ませていただきました。面白い設定なので面白く読ませていただきました('ω') (2019年5月14日 18時) (レス) id: 848e96a0c3 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - Airさん» ありがとうございます!そう言ってもらえると嬉しいです! (2019年5月13日 19時) (レス) id: 855de7cb2f (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草(プロフ) - もうふさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年5月13日 19時) (レス) id: 855de7cb2f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:勿忘草 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月12日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。