27話 ページ29
「ねぇ、君名前はなんて言うの?コドルは?」
ハッと我にかえるとエリクレスの周りを女子達が囲んでいた。
いつもユウといたエリクレスは側から見れば美男美女のカップルだ。
それが今はユウがいないことで狙われやすくなっている。
軽く流そうとするがさっきユウに言われた言葉を思い出す。
“愛想良く”
「すみません、また後で。」
笑顔で少し困ったように笑うと余計に女子達の心に火をつけてしまったのか、黄色い声が飛ぶ。
「(逆効果じゃん!!)」
さっきよりも女子達は盛り上がってしまっている。
逃げ道を探そうにも見つからない。
その時誰かに腕をぐっと引っ張られた。
『何やってるの?』
ユウだ。
呆れた顔をしているがバカにしてるようにも見える。
腕を絡ませ密着してくるユウに演技だと分かっていてもドキッとしてしまう。
「なんだ、彼女持ちじゃん。」
女子達は残念そうに去って行った。
『ハハッ、本当に私がいないとダメなんだ。』
去って行く女子達の背中を見つめながら言った。
「愛想良くしろって言ったのはユウだろ。言われた通りにしたらああなったんだ。」
『はいはい。部屋まで送ってくよ。』
ユウはそう言うとエリクレスが持っていた紙を奪い取り歩き出した。
そして近くにあった扉を開ける。
『ここみたいだね。まぁ、ルームメートと仲良くするんだよ。喧嘩を売らないように。』
それだけ言うとユウはいなくなってしまった。
気まぐれの猫のようにサッと現れ、サッと消えていく。
なんだかんだユウに振り回されているようだ。
彼女の背中を見送るとエリクレスは部屋に入った。
『さてと、私のルームメートはどんな子かな?』
自分の部屋に戻ったユウは窓の外を眺めながら呟いた。
すると乱雑に開けられた扉から大きな荷物を持った子が入って来た。
淡い水色の髪と同じ瞳の色をした女の子だ。
「わぁ………綺麗…」
開口一番、彼女はそう言った。
肩からずり落ちる荷物など気にもせずユウを見つめたまま動かない。
『えぇ…と?貴女は?』
「あ!すみません!あまりの美しさについ見惚れてしまって…私はアリスと申します!」
『私はユウです。よろしくお願いします。とりあえずその荷物をなんとかしませんか?』
そう言うとアリスは顔を赤らめ、荷物を片付けだした。
テキパキと作業をするアリスを感心した目で見る。
見かけによらずしっかりしているらしい。
『利用しがいありそう…』
ユウの言葉は外の音にかき消された。
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作者名:晴 | 作成日時:2016年5月24日 19時