第十四話 ページ15
目の前で人が死んだにも関わらず何も感じない。あまりにも現実離れしていたせいだろうか。自分に話しかけた男は何者だったのだろうか。
先程、去り際に一瞬だけ見えた顔には腕と同じようにツギハギがあった。
「下がって! 写真を撮らないでください!」
「やめなさい! 人が死んでるのよ!? 何考えてるの!」
スマホを構えていた生徒の中にはブルーシートの隙間から運転手の死体を撮る者もおり、警察の注意する声や教師の怒号が響く。それでもシャッターの音はやまず、とうとう自撮りしながら実況配信する生徒まで現れた。
「炎上するに決まってんじゃん。しかも顔出しとかバカなの?」
Aが呆れていると、どこからともなく子供ほどの大きさの呪霊が飛んできて車の屋根にとまった。すぐに校舎裏で見たヤツだと気づく。
だが、呑気に実況配信する生徒の頭をついばもうとした呪霊は次の瞬間、吸い込まれるように姿を消した。
「収穫アリ、と。ここまで来た甲斐があったよ。……それにしても、私は猿山にでも来てしまったのかな」
「本当に揃いも揃ってモラルを疑う光景ですね」
反射的に振り返ると、少し離れた場所に
「……マジ?」
待て待て待て待てまさかこんなとこに来るなんて思ってないしていうかいつから居たんですか大丈夫か髪型おかしくないかなネクタイ緩んでたわ直そ。
と脳内が忙しくなっているAと夏油の目が合ってしまい、二人揃って固まる。三秒後、彼は片手で顔を隠してそっぽを向いた。肩が震えている。
「あら、どうしました?」
「いや……フフッ……ちょっと……」
やっぱりどこか変だったかとスマホを手鏡の代わりにして見るが特におかしなところはない。ネクタイもちゃんと直した。
「いや、すまないね。A、だったかな?」
「はい。またお会いできて嬉しいです」
「この子は?」
「呪霊の顔面に裏拳かました子だよ」
そう言ってまた笑い出す。なるほどそれで笑っていたのかと納得した後に遅れて恥ずかしくなってきた。
女性は
「では夏油様、そろそろ」
「ん? ああ、もうこんな時間か。またね、A」
二人が風のように去ってからAは『自分にもう少し会話力があれば』と名残惜しい気持ちでため息をついた。
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闍弥嵩 李(プロフ) - 猫かぶりさん» ありがとうございます! いやほんと、ななみん背高いし紳士だし実は優しいし最高ですよね! 芥見先生が『選ぶなら七海にしておけ』と勧める気持ちが分かります! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 推しLOVEさん» ありがとうございます! 頑張りますね! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 続きがとても楽しみです!そしてななみん背高いぃぃぃ!!! (2021年5月30日 23時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
推しLOVE - すっごく面白いです!頑張ってくださいね! (2021年5月23日 19時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 花笠さん» ありがとうございます! (2021年4月17日 15時) (レス) id: 1dd78312f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2021年2月15日 17時