検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:55,994 hit

第十五話 ページ16








 土曜日の午後、Aは一人で盤星教(ばんせいきょう)の施設を訪れていた。とはいえ夏油(げとう)本人からいつでも遊びに来ていいと言われたわけではないので、館内に入るまで五分くらい迷いはしたが。

「あの……そこの君」

 話しかけてきたのは、以前にも見た挙動不審な男性だった。今日もどこかくたびれた様子だ。
 三上と名乗った彼は周りの信者に聞かれないように壁際に手招きすると声を潜めて言った。

「夏油には……あの男には、関わらないほうがいい」

「え?」

「あいつは人殺しだ。園田さんもあいつに殺された」

「……え」

 三上は夏油がいかにして教祖になったのかを話してくれた。

 八年前、突然現れた彼は自分が次のトップだと告げ、それに反対した人間を見せしめに殺した。そしてその犠牲になったのが当時、盤星教代表役員だった園田だという。
 A自身は現場を見ていたわけではない故にその話を信じることができずにいた。
 

「夏油は危険だ。だいたい呪術師なんてろくなもんじゃない。気味が悪い」

「その言い方やめてください」

「え、いや……あ」

 ――うわ、やってしまった。

 喧嘩するつもりはなかったのですぐに謝ったが、彼は何故か怯えた様子で黙り込む。その理由はすぐにわかった。

「私がどうかしたかい?」

「!?」

 いつのまにかAの背後に夏油が立っていた。初めて会った時も思ったが背が高い分、見えない圧を感じさせる。

「ずいぶんと楽しそうな話をしていたようだね。私も混ぜてほしいなぁ」

 ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべてはいるが、瞳の奥は笑っていない。三上もそれを感じ取ったのだろう。『用事がある』という典型的な理由をでっち上げてどこかへ行ってしまった。

「また来てくれるとは思っていなかったよ」

「あ、はい……」

「館内は好きにまわっていいから。さっきみたいな変なのに絡まれないようにね」

 それだけ言って去ろうとした夏油を「待って」とAは反射的に呼び止めていた。知り合ってまだ間もないのだから距離があるのは当然だ。それでも少しでもはやく打ち解けたかった。

「? なんだい?」

「えっと……あなたの術について教えてほしくて。かっこいいなぁ、って思って」

「……ああ」

 もうちょっとマシな言い方はできないのかと自分で自分に呆れたが、幸いにも夏油は気を悪くした様子もなく説明してくれた。
 

第十六話→←第十四話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (84 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
125人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

闍弥嵩 李(プロフ) - 猫かぶりさん» ありがとうございます! いやほんと、ななみん背高いし紳士だし実は優しいし最高ですよね! 芥見先生が『選ぶなら七海にしておけ』と勧める気持ちが分かります! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 推しLOVEさん» ありがとうございます! 頑張りますね! (2021年6月1日 16時) (レス) id: 425bc70507 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 続きがとても楽しみです!そしてななみん背高いぃぃぃ!!! (2021年5月30日 23時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
推しLOVE - すっごく面白いです!頑張ってくださいね! (2021年5月23日 19時) (レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - 花笠さん» ありがとうございます! (2021年4月17日 15時) (レス) id: 1dd78312f0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2021年2月15日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。