歌い手様短編集[大人数合作]part4 (ページ6)

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また笑顔で、/urt　時林檎。ページ6

いつも渉と来ていたカフェで、ぼーっとしながら外の景色を眺める。

まだ煩いくらいに脈打つ心臓に嫌気が差し、私は深呼吸をした。

それでもまだ煩いが、気にしない。

私は、渉がくれた鞄から緑のイヤホンを取り出し、耳にはめた。

スマホを操作し、大好きなあの曲を聴く。

バラードのようにゆっくりと流れるその曲は、今の私の気持ちにぴったりだ。

事の発端は、今から三時間前の事だった。

～*～

『転勤、する…？』

う「あぁ。長野県辺りに。」

『え？いつ？？』

う「えーと。明日出発する。」

『はぁ？』

どうしてこんなに大事な事、彼女に早く言わないの？

意味分かんない。

う「で、お前は絶対長野行かないだろ？」

『え、うん。』

私は東京からあまり出たくないのだ。

う「うん。だから会えんのも一年に一回位になるかも。」

それってつまり遠距離恋愛ってこと？？

『…それなら、もう別れよ。』

う「は？」

『遠距離恋愛とか、考えられないし。それに、渉の事もう好きじゃないし…。』

そんなの嘘だ。遠距離恋愛するのが怖いだけ。渉がどっか遠くに行きそうだから。

ｶﾞﾀｯ

渉は席を立ち、悲しそうな顔をしてお店を出た。

～*～

渉には謝りたいけど、私何かが、謝る立場じゃないし。

そんなこんなで、色々悩んでいる。

一回自分を落ち着かせるために、コーヒーを飲む。

渉が好きなブラックコーヒーは、私にはまだ苦すぎた。

ほら、また渉のこと考えてる…。

そういえば、付き合って間もないころ渉が、

う「最近Aの事ばっか考えちゃうんだよね。」

って言ってた。

渉はまだ私の事好きでいてくれてるかな？

そんなの関係ない。

私は、席を立ちお店を出た。