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キッチンから持ってきたペットボトルを手に私を抱えてソファに座る。
テレビを点けるとDVDの映像が流れだした。
私はソファにもたれた黒木君の前腕に顎を乗せ、リラックス状態。

黒木君の腕、さっき見た通りガッチリしてて案外太いんだ。
橈骨と尺骨に程好く隆起した筋肉は思わずキュンとしてしまう。

一見華奢に見えるから尚更かな……

少し胸をときめかせながらテレビに目を向ける。
が、流れている映像は私の軽い心とは真逆。
戦国時代で甲冑の列が暗い雰囲気で映っていた。

なんか……映像古いんですけど……

ニャアと黒木君の顔を見上げると、哀しそうな笑顔で答える。
「つまんない?だよね……ミミこれはね……」
私の頭に大きな手を乗せ、撫でる。

「黒澤明監督の『影武者』て映画だよ。」
あ、聞いたことがある。前に一度パパがママに熱く語っていたことがある。

「この映画を見ていると、とても考えさせるんだ。」
何を?
「己が何者なのか?」
え?
「俺は何故生まれてきたのか?望まれて生まれてきたのか?」

黒木君、何言ってるの?
そんな事言ったらお父さんもお母さんも悲しむよ。
黒木君は両親に愛されているはずだよ、多分……

「本当の自分が何処にいるのか、わからなくなる。」

私は私と同じ歳の黒木君が、何故孤独を感じているのか不思議でならない。
黒木君は『対人関係のエキスパート』だよ。
知り合いだって、友達だって、私よりもずっと多いじゃない……

「皆の前の俺は影武者なんだよ。本当の自分を出していないんだ……いや、出せなくなってしまった……」

黒木君……私達KZの前でも影武者なの?
それって、とても切ないし悲しいよ……

私は身体を反転させ、黒木君の顔へ両手を伸ばした。

黒木君……泣かないで……

いつも見せる愁いの瞳は一層強く、何処を見ているのか分からない。
多分、涙を流さないだけで、今泣いているんだと思う……

私は頭を黒木君の顎へ何度も擦り付ける。
「ミミ……ありがとう……慰めてくれてるの?」
違うよ、黒木君は慰めなんていらないでしょ?
励ましてるんだよ。

いつか……いつか黒木君に高宮さんの話をしてあげるね。
黒木君の孤独とは次元が違うけれど私も孤独を感じ、高宮さんに励まされた事がある。
高宮さんの受け売りだけど、黒木君の心にも響くといいな……

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り一 - この薬のんでみたい! (2020年5月22日 14時) (レス) id: a9605826b0 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 葵さん» めっちゃ褒めすぎですよ、葵さん(汗)でも楽しんでいただけたなら嬉しいです。ありがとうございました。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
- なんと表せば良いのか分からないくらい、読んでいてワクワクしました!凄く想像力が豊かだからこそこんなに素晴らしい作品が書けると思うので、ほんと尊敬します(p^-^)p (2019年4月19日 22時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - みなみさん» 読んでくださり、ありがとうございました。いくつか掛け持ちをしているのでメドがたってから作りたいと考えています。妄想は絶えずしてますので、ネタはあるんですが(^_^;) また新作を出した時にはよろしくお願いいたします。 (2018年11月25日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - また新しい作品読みたいです!応援してます! (2018年11月24日 21時) (レス) id: 405036adca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千祥 x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月28日 0時

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