夢のおくすり

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「猫用シャンプーが無いんだけど、アミノ酸シャンプーだから安心して。」
言いながら私を泡だらけにして楽しそうに洗う。

く……くすぐったい………
でも気持ち良い……特にお腹を撫でられるととても気持ち良くて、うっとりしてしまう……

意識が遠退いていきそうになっていると、またシャワーの音。
咄嗟に飛び起きて全身を力一杯ブルブル振るわせた。
「ぶわっ！ミミ、こらっ！」

あ……ごめん、黒木君……
わざとじゃないんだよ……

思いっきり飛ばしたから、黒木君の髪も顔もTシャツも、泡がいっぱい付いていた。
仕返しではないんだけど、笑ってしまう。

「ミミ……」
呟くように呼ばれた黒木君の顔を見上げると、さっきよりも邪悪な笑みを浮かべている。

こ……こわい……
首根っこを押さえられ、まさしくシャワー地獄。
でもここは耐えなければ……
逃げていても仕方無いし、こんな貧相な姿のままは嫌だし……何より黒木君を怒らせてはいけない……
固く目を閉じたまま、ひたすら我慢。

「終わったよ。よく頑張ったね。」
シャワーの音がしなくなったと同時に優しい声がかかる。
ふぅ……疲れた………
お風呂に入るだけでこんなに体力使ったのは初めて。
猫って大変！

「さ、ここで待っててね。」
黒木君は私をお湯の入った洗面器に浸からせる。
気持ちいい……
ちょうど湯槽に浸かってるみたい。
湯加減もいい感じ。
黒木君は私を置いて浴室から出て行った。

はぁ……和む……
日頃の疲れがお湯に溶けていくみたい……
人間に戻ったら温泉に行きたいな……

「おまたせ。」
洗面器の縁に顎を乗せ、うとうと夢見心地でいると、サッと抱き上げられた。
そして、ドボンッという音と共に波のような水しぶきを浴びる。

な、なに！？ 何が起こったの？
目を大きく見開くと、艶やかな黒木君の顔が目の前にある。

「気持ち良いね、ミミ。」
広い肩幅に綺麗に浮かび上がる鎖骨のライン。
美しい肌に玉になって流れる水しぶきを見た私は、声にならない叫び声を上げる。

ダメダメダメ〜〜〜！！
姿は猫でも中身は猫では無いんだから！

こんなの正気ではいられない！
私は必死に手足を動かしもがく。
「どうしたの？大丈夫だよ、落ち着いて。」
両手で包み込まれ、広い肩に乗せられた。

もう……だめ…………

直に感じる黒木君の素肌と温かさに、私の頭はショートしてしまった……

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