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立花と合流し、三人でゆっくり歩く。
何気に空を見ると薄い雲が掛かったように三日月がボヤけて見えた。

朧月……

昨夜の夢で見た立花の蒼白く浮かぶ美しい寝顔が印象的で、思わず呟いてしまった。

「本当だね。この前読んだ源氏物語の朧月夜はこんな感じだったのかな?」
月を見上げる立花に息が止まる。
この前……読んだ?

「もしかして……源氏物語の本、持ってんの?」
「うん、家にあるよ。」
「他は?立花って、どんな本持ってんの?」

俺の心臓は心拍数が上がっていく。
落ち着け……小さく二人に気づかれないよう息を吐く。

「え?家?え〜と……宮沢賢治と夏目漱石と……
「三島由紀夫は?坂口安吾は?」
「え!?」
少し捲し立てるように聞くと、立花は大きく目を見開いた。
驚いた顔を俺は直感的に肯定と判断する。

まさか……そんな……ならば決定的な事を……

「じゃあ、澁澤龍彦は?」
「ストップ!上杉、アーヤに聞くような事じゃ無いだろ?」
黒木は鋭い視線を向け、俺を制する。
「誰?ごめん、その人は知らない。」
立花の言ったことに黒木の緊張が解けたが、瞳には深い疑いの色が浮かんでいる。

「どうしたんだ?上杉、何か変だぞ。」
一見俺を心配するような質問だが、心意は分かっている。

『もしかして夢にアーヤが出てきたのか?』
音にはならなくとも、胸に届く声。

あ……黒木は立花の夢を見たんだ……

経験者のみが知りうる幸福と嫉妬。
妬くな、黒木……
文句が言いたければ若武と小塚に言ってくれ。

「あぁ!思い出した!澁澤龍彦って、三島由紀夫と仲が良かった人だよね。」
終わったと思っていた話に俺と黒木は渋い顔を見合わせる。
「ん?違った?」
小首を傾げる天然顔が俺達の真逆を行く。
cuteすぎる立花に二人でため息。

「いや、悪かった。立花、澁澤の事は忘れてくれ。」
極力興味を持たせないよう、流すように答えた。
「変な上杉君。」
拗ねた立花に黒木がフォロー。

「アーヤ、源氏物語だけど……
二人は光源氏について楽しそうに話しながら俺の前を歩く。
俺は……参加しない。いや、できない……

偶然ならば冗談が過ぎるんじゃね?
何で昨日の今日で朧月?
夢のくせにリアル過ぎんだよ……
立花の口元ばっか見ちまうだろ……


『妹がね、朝、急に猫が欲しいって言い出したの。何か、夢で見たんだって。』

心ここに在らずの状態で二人の後を歩いていると、現実が降ってきた。

何だって?……
今、“猫”とか言った……よな?……

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り一 - この薬のんでみたい! (2020年5月22日 14時) (レス) id: a9605826b0 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 葵さん» めっちゃ褒めすぎですよ、葵さん(汗)でも楽しんでいただけたなら嬉しいです。ありがとうございました。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
- なんと表せば良いのか分からないくらい、読んでいてワクワクしました!凄く想像力が豊かだからこそこんなに素晴らしい作品が書けると思うので、ほんと尊敬します(p^-^)p (2019年4月19日 22時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - みなみさん» 読んでくださり、ありがとうございました。いくつか掛け持ちをしているのでメドがたってから作りたいと考えています。妄想は絶えずしてますので、ネタはあるんですが(^_^;) また新作を出した時にはよろしくお願いいたします。 (2018年11月25日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - また新しい作品読みたいです!応援してます! (2018年11月24日 21時) (レス) id: 405036adca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千祥 x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月28日 0時

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