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立花が出て行ってから、改めて部屋を見回してみる。

しかし……女っ気の無い部屋だな……
裕樹さんがボヤく訳だ……

ぬいぐるみも無ければファッション雑誌の一つも無い。
本立てにはもちろん漫画も無い。
小説が並んでいるだけだ。
流石国語が得意なだけあって、よく読んでるな……

源氏物語に宮沢賢治……うん、一般的。
星の王子様に……三島由紀夫に安部公房……
ん?なんか路線が……坂口安吾に谷崎潤一郎………

って、澁澤龍彦!?
え、え? えー!?

立花……すげー本読んでんだな……
いや、衝撃的……度肝を抜かれた……
これは明らかに夢の仕業に違いない。
立花に限って……そんな……

やっべ……夢から醒めて立花に会った時、立花=澁澤 で見てしまいそうだ。
何故、澁澤を読もうと思ったのか……
聞いてみたいけど……絶対聞けない!
男の俺でさえ挫折したからな……

悶々と考えていると立花が戻ってきた。
パジャマを着て、タオルで頭を拭いている。
机に鏡を置くとドライヤーで乾かしだした。
ドライヤーの風に乗って良い香りが流れてくる。
乾かし終わるとブラシで丁寧に髪をときだした。

妙にドキドキする……

俺には身近に母さんしか女はいない。
物心ついた小学校中学年にはプールや体育の着替えは男女別教室。中学からは男子校。
よって女が髪をとく姿を間近に見たことが無い。

本の趣味は置いといて、やっぱ“女”なんだな、立花。
髪をとかした後、顔に何か付け始めた。
が、俺の視線に気づいたのか急に振り向き、「こら!女がお手入れをしている姿は見ちゃダメよ。」と良い放つ。

え〜と……立花? 猫=俺 に気づいてないよな……

それこそ、安部公房の『箱男』、箱=猫 みたいな気分になる。
箱(猫)の中に“俺”はいて、好きな女を眺めてドキドキしてる……

やっべ……箱男も確か……好きな女の家に行って外から見てなかったか?
“同じ”とか、マジ嫌だし!
何とかこの夢から醒める方法は無いのか?
あっ! 身体が眠りから覚めればいいんじゃん。

・・・・

どうやって?
だって俺の意識はこの猫の中だぜ?
何か手段は……
とりあえず、走ってみる?

俺は心の中で『目を覚ませ!』『起きろ!』と呪文のように唱えながら部屋を走りだした。

「え!? 猫ちゃん??」
立花は急に走りだした俺に驚き、戸惑っている。

うおっ、スゲェ!
こんな小さな身体でもめちゃくちゃ速く走れるじゃん。

猫の身体って軽い!

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り一 - この薬のんでみたい! (2020年5月22日 14時) (レス) id: a9605826b0 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 葵さん» めっちゃ褒めすぎですよ、葵さん(汗)でも楽しんでいただけたなら嬉しいです。ありがとうございました。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
- なんと表せば良いのか分からないくらい、読んでいてワクワクしました!凄く想像力が豊かだからこそこんなに素晴らしい作品が書けると思うので、ほんと尊敬します(p^-^)p (2019年4月19日 22時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - みなみさん» 読んでくださり、ありがとうございました。いくつか掛け持ちをしているのでメドがたってから作りたいと考えています。妄想は絶えずしてますので、ネタはあるんですが(^_^;) また新作を出した時にはよろしくお願いいたします。 (2018年11月25日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - また新しい作品読みたいです!応援してます! (2018年11月24日 21時) (レス) id: 405036adca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千祥 x他1人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年3月28日 0時

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