夢のおくすり

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「もう、落としちゃダメでしょ。」
カレンダーを拾い上げ、じっと眺める立花。
その様子をただ見上げ、眺めた。
顎に片手を添えて考え込んでいる。

「今日も集合無かったな……」
淋し気に呟くとボールペンで書き込む×の印。

集合？……あ、もしかしてKZの集合のことか？

元の位置に置かれたカレンダーをもう一度見てみる。
確かに、最後の集合があった日は×の前日。
最近事件になりそうな事無かったもんな……テストも間にあったし……
そう言えば立花は前に“KZは生き甲斐”って言ってたな……
立花……お前、可哀想なヤツだな……

俺には、いや、俺達にはまだサッカーやゲームと気晴らしになる事や、数学や研究と夢中になれる事がある。
立花は？
お前にはKZ以外は無いのか？
もっと周りを見てみろよ。
俺が楽しい事教えてやれればカッコいいんだろうけど、生憎数学以外教えてやれねぇ。
悔しいけどこういうのって黒木が適任だよな。

・・・・

悔しい？
え？ なんで？

黒木は以前立花に交際を申し込んでいる。
何故か便乗して小塚までもしている。
若武に至っては全力でアピールしていて、美門は体よく心の友を振りかざしている要領の良さ。
七鬼は……除外。

俺は？ 一体立花に何かした事あんの？
まだ自分の気持ち確認しただけでアピールの一つもして無いじゃん。
それなのに黒木のこと悔しがるなんて、おかしいんじゃね？
はぁ……俺も何かアクション起こした方が良いのかな……
ベッドの上で丸まって落ち込んでいると、身体が浮いた。

「猫ちゃん、少しお話ししようか。」
立花もベッドで横になり、俺を胸の上に置いた。

う……動けねえぇ……
立花、俺の置くとこ少しは考えろよ。
右にも左にも動けないし、真正面には立花の顔。
両手を胸の下、両足も小さくたたんで亀みたいに丸くなる。
間違っても立花の胸に触れないよう細心の注意を払う。

細く小振りな手で頭を撫でながら、学校の事、親の事を一人話しだした。
やっぱ兄妹なんだな。俺を撫でる手の感じ、リズム、裕樹さんとよく似てる。
親への不満も似たようなものだ。

撫でられる事に心地よく、思わずウトウトしてしまう。
半分流すように聞いていると急に身体の下へ降ろされた。

「さて、お風呂に入って寝ますか。」
大きく背伸びをし、「おとなしくしてるのよ。」と俺に言いながら部屋を出た。

釘なんか刺さなくても部屋から出ねーよ。
裕樹さんには追い出されたし、チビはもう寝てるし……行くとこねーじゃん。

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