（2） ページ25
それは、幼い時の記憶……
俺はとても小さくて、義母を”母”だと信じていた頃。
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ！
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ！
遊んでいた場所も定かでは無い。
公園だったか、庭だったか……
母は木に顔を伏せ、振り返れば俺の動きを注視する。
『今動いた？』
『動いてないもん！』
何度も同じ問答を繰り返し、少しずつ母へと近づいて行く。
腕を伸ばせば母に届く、最後の
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ！！
母にタッチをして駆け出す。
母が10数える間走って逃げる。
が、すぐに捕まって抱きしめられた。
柔らかな腕の中……嬉しくて笑う俺の声……
とても幸せな記憶……
しかしその記憶も濃い霧がかかっていて、若かった母の顔も思い出せない。
いや、思い出さない方がいいのかもしれない……
霧がかかっている方が美しい思い出のままでいられる。
俺は心の中で呟く。
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ！！
振り返り仔猫を見る。
仔猫は咄嗟に隠れる処が無かったようで、固まったまま動かない。
俺は頬筋が弛んでいくのを拒めない。
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ……
数回繰り返し仔猫の姿を確認していると、俺の住むマンションが見えてきた。
これで最後。
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ！！
マンションの入り口で振り返ると仔猫の姿は無かった。
付いて来るのを止めたか……
安堵と残念な気持ちが交錯する。
驚いた……
たった数十分の、ほぼ避けられている状態であったにも拘わらず、俺の胸には夕立の暗雲のように淋しさが広がる。
俺は相手をして欲しかったのか？あの仔猫に……
何を期待していたんだ？
洩れるため息と共にオートロックのボタンを押す。
すると、下腿にトンッと何かが当たった。
足下を見ると仔猫が頭を付けて何度も擦り付けてくる。
あ……タッチされた……
でも……俺の勝ち……
俺の胸から瞬く間に暗雲が消え去った。
捕まったら負けなんだよ……仔猫ちゃん……
俺は仔猫を抱き上げ、視線を同じ位置へと持ってくる。
ショコラブラウンの毛並みに俺だけが映る純粋で大きな瞳。
どことなくアーヤを思わせる仔猫に「アーヤ……」と声をかけてみる。
仔猫は「はい。」と返事したかのようにミャと小さく鳴いた。
仔猫の体温は…微かに記憶するあの日の母の温もりに似ている……
本当は俺の完全敗北……
捕まったのは俺の方……
愛おしくて抱きしめてしまう……
「ミルクをあげようね……」
夢なら覚めないで欲しい……
だ〜るまさんが〜こ〜ろんだ！
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り一 - この薬のんでみたい！ (2020年5月22日 14時) (
レス) id: a9605826b0 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 葵さん» めっちゃ褒めすぎですよ、葵さん(汗)でも楽しんでいただけたなら嬉しいです。ありがとうございました。 (2019年4月20日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - なんと表せば良いのか分からないくらい、読んでいてワクワクしました！凄く想像力が豊かだからこそこんなに素晴らしい作品が書けると思うので、ほんと尊敬します(p^-^)p (2019年4月19日 22時) (レス) id: 5cf405873d (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - みなみさん» 読んでくださり、ありがとうございました。いくつか掛け持ちをしているのでメドがたってから作りたいと考えています。妄想は絶えずしてますので、ネタはあるんですが(^_^;) また新作を出した時にはよろしくお願いいたします。 (2018年11月25日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - また新しい作品読みたいです！応援してます！ (2018年11月24日 21時) (レス) id: 405036adca (このIDを非表示/違反報告)
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