憂鬱はここから ページ11
ここはGの教室。
授業も終わり、各々帰り支度をしている時、美織は机に鞄を置いたまま立ち尽くしている。
「美織、帰んねーの?」
身動きひとつしない美織に火影が声をかけると、驚いたように振り返った。
「いや、あ……帰るよ……」
「……どうした?何かあった?」
しどろもどろに答える様を不思議に思い、近づいた。
すると鞄の中にサッと何かを隠す。
鞄を後ろ手に「な、何でもない!」
いつもより甲高い声を上げ、慌てる。
ますます気になった火影は「何隠したんだ?」と問うてみる。
しかし返事は無く、顔を赤くするだけ。
ふ〜ん……美織、んな本持ち歩いてんだ……
直感がはしった火影は意地悪く口角を上げた。
最年長で元ヤンである美織が持っていてもおかしくは無いのだが、今までそういった事に興味を示したことが無かったので、からかいたくなった。
冷静を装って諭すように言う。
「青少年、気持ちは分かるが、塾に持って来るのはいかがかな?」
「はぁ?」
「今はいないが俺達には“王様”と言う、うら若き乙女の存在もあること…だし……
「な、何言ってんだ……
美織は“王様”の言葉で一気に顔を赤らめた。
それはもう、トマトかゆで蛸か?とツッコミたくなるほど……
美織、もしかして……
そっち系の本などではなく、王様へのプレゼントか何かか?
しかし、一緒に過ごしてきた時間の中に、美織が王様に好意を抱いているのを感じたことが無い。
これは真相を確かめないと気になって仕方がない。
隠した物に手を伸ばしかけた時、静かに美織の背後に揺れる影。
火影が気に止めた途端、美織は机越しに腕を背後に回され締め上げられた。
「火影、鞄の中だ。このギンガムチェックの巾着だ。」
「おいっっ!何するんだ!」
美織は背後の若王子に声を裏返して叫んだ。
その隙に火影はサッと巾着を取り出す。
白地に淡いパープルのギンガムチェックの巾着は握るとカサッと紙が擦れるような音がし、軟らかい。
「おい、や、やめろ!」
必死に腕を解こうともがく美織だか、若王子の締め技に抗う事しかできない。
「よし!火影、中を見ろ。」
火影は悪戯な笑みを美織に向け、若王子に頷いた。
片手程の巾着を紐解き、中を見る。
「あ゛ぁぁ……!」
絶叫に近い声を上げる美織。
だが、火影はそんな声など耳に入らない。
ただ呆然と赤い顔をして巾着を手に、固まってしまった。
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#モモ# - 面白かったです!他の作品も頑張ってください! (2021年8月17日 11時) (レス) id: a8579e89ad (このIDを非表示/違反報告)
蜘蛛 - はい!お願いしますm(__)m (2020年3月18日 9時) (レス) id: 6a44c88143 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 蜘蛛さん» この度は読んで下さり、ありがとうございます。一小節とは、番号若しくはタイトルを付けて欲しい、と言うことでしょうか? (2020年2月19日 23時) (レス) id: 1ff717e023 (このIDを非表示/違反報告)
蜘蛛 - すみませんが、一小節ずつ見れるようにしていただけないでしょうか。 (2020年2月19日 22時) (レス) id: 6a44c88143 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 雀さん» ありがとうございました(^.^) (2018年8月7日 19時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
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