二夜目 満月 遭遇 其の三 ページ6
「この程度でへたってんのか? こんな奴がポートマフィアの幹部たぁ笑える話じゃねえか。おチビさんよ。」
全身に冷水を掛けられたような気分になった。普段こんな事を言われたら、俺は直ぐにでも振り返って言ったであろう奴をぶん殴っていただろう。だが、その声は絶対に俺が聞くはずのない声だった。
「あら、来たの?」
口元を軽く押さえた餓鬼がそう言った。その視線は俺の背後へと向けられている。俺はゆっくりと、自分の背後を見た。そして固まった。
外套から胴衣に、靴、革帯に至るまで黒一色。中に着こんだ襯衣は灰色で、瞳はどんな闇よりも深い黒、男にしては長めである烏の濡れ羽色の波打った髪は首の後ろで束ねられて肩から胸へ流している。黒い帽子を被っていて、俺よりも少し背が高い。
そいつは俺と同じ顔をしていた。
「随分な間抜け面だなぁ、五大幹部さんよ。餓鬼みてえなちっこい身長と同様、威勢も小さいってとこか?」
そいつは俺と同じ声で俺をそう嘲笑った。
「まあ、普通自分と同じ顔の奴がいたら、そういう反応をするよな。そうだろう? 五大幹部、中原中也さんよ。」
「手前は、手前は何者だ! 何で俺と同じ顔してやがる! 俺に兄妹は……!」
「そう。手前に兄妹はいねえ。手前はそこの餓鬼と同じ人の形をした人ならざる者。そうだろ? 個体番号134。」
「ふふ。今回のコンプレックスさんはおしゃべりさんのようね。405もやるじゃない。」
個体番号……。名前じゃなくて番号で呼んでるっつう事と、この黒い俺の言っている事から察するに、こいつらは異能力者の研究機関か何かの出か。
「折角だから教えるね。個体番号405の異能は敵のコンプレックスを具現化して本人を襲わせる異能。具現化されたコンプレックスは生み出した本人の身体能力を余裕で上回る。」
「チッ、異能生命体かよ。驚かせやがって……。」
「と、いう訳だ。かかってこいよ、中原のちびっこマフィアさんよ。」
俺は目の前にいる黒い自分を見た。こいつと、この女の餓鬼同時に相手出来る自信はねえ。でも、やるしかないのも事実だった。
「手前、俺を散々チビって言ってくれたじゃねえか。覚悟しとけよ。」
一人と一体は不敵に笑った。
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翠緑胡蝶(プロフ) - 以後気をつけます……。 (2019年8月24日 0時) (レス) id: 3ac993459a (このIDを非表示/違反報告)
翠緑胡蝶(プロフ) - かなとさん» すみません、うっかり外すのを忘れていました。教えて頂きありがとうございます! (2019年8月24日 0時) (レス) id: 3ac993459a (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年8月23日 16時) (レス) id: b1d25bd6f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翠緑胡蝶 | 作成日時:2019年8月23日 14時