【仮住】明日もここで (ページ2)

今日:36 hit、昨日:43 hit、合計:3,486 hit

2 忘れ物ページ2

太陽が落ちかけた頃、やっと顔の熱が引いていく。走り去った彼のことを考えながら、ちらりと横を見る。彼はもう去ったため、そこには何もない。はずなのだが、そこには彼が持ってきたであろう水筒が置いてあった。
…これはかなりマズイのでは？
あいにく、私は彼の家や連絡先を知らない。きっと彼も私の家や連絡先を知らないだろう。知らないからと、置きっぱなしにするのは避けたい。盗まれたって目覚めが悪くなるだけだ。
悩みに悩んだ末、結局私は彼の水筒を持ち帰ることにした。その結論が出たのは日傘が意味をなさなくなる頃だった。
────────
さほど遠くない家に着くと、疲れがドッとのしかかってくる。日傘を傘立てに差し、急いで入浴の支度をする。日が落ちたとは言え、夏は夏なのだ。当然汗をかく。そんな時は、堅苦しい服よりヨレた部屋着の方が断然いいに決まってる。
パジャマ、下着、バスタオルが用意できたことを確認すると、服を脱ぎ捨てて浴室へと入った。
シャワーで汗を一気に流すとやっと帰ってきたのだと安心する。髪が洗い終わり、さっぱりした気持ちで体も洗う。その時、ボティーソープの残りが少ないことに気がついた。そろそろ買い足さなければな。
体を隅々まで洗い、浴室を出ると、思っていたよりも冷房の効きが早く、湯冷めしそうになる。急いで体の水滴を拭き取り、パジャマに腕を通す。灰色がかったパジャマは何となく彼を連想させた。
リラックスした気持ちでお酒と晩御飯を用意する。出来合いな晩御飯だが、無いよりはましだろう。机の上に置いて、テレビを付ければ1人晩酌の始まりだ。別にお酒は強くは無いが、決して弱い訳では無い…と自負している。
その後、小一時間ほど楽しんだ後、間食をしないように歯を磨く。こうでもしないとパクパク何かを食べてしまいそうなのだ。口をゆすぎ、顔を上げると、鏡に映っている灰色のパジャマ姿の自分が目に入る。そういえば、彼の水筒を持ち帰ってきたのだ。盗まれないようにだとしても、勝手に人の物を持ち帰った身だ。流石に洗って返すのが礼儀というものだろう。私は袖を捲りながら、流し台へと向かった。

3 遭遇→←1 公園