92話 ページ13
翔奏が東卍の位置を割り出してそこに出向いて叩く。
東卍と分かり次第手を出す。
超簡潔に言えばそんな作戦を立案し、数日後の今日──たった今、実行している。
自分は翔奏のいる埠頭に残って翔奏の仕事が終わるまで護衛。怪我人に護衛が務まるかと言われたら務まらないが。
その代わり鶴蝶も一緒に残って護衛だ。頼もしいったらありゃしない。イザナは出掛けた。
総参謀の稀咲君は、因縁浅からぬタケミっち君の居場所を翔奏が突き止めると怖い顔をして出ていった。
何をそんなに憎んでいるんだか。
「まだらん次送った住所の所行ってねー」
もっちーはそのまま南下すればあと5分で敵と相見えるよー、と翔奏はパソコン片手に地面に置かれた携帯へ話し掛ける。
パソコン3台と携帯が多数。
パソコンの画面には監視カメラ映像やら位置情報やらが所狭しと映し出され、携帯は各々の幹部へと繋がっている。
「神凪ちゃーんオレら雑魚ばっかでつまんねぇ」
そう言うのははいた兄。声の奥からは人の骨が折れる音と悲鳴。
「これが1番早く終わるんだけど……んー、そしたらそこの下っ端一掃したら好きな所行っていいよー」
「オレらだけ超雑じゃん。もしかして喧嘩売られてる？」
「きーちゃんに手を出しておいてこの程度で済んでることに感謝して欲しいね」
「黒脛ィーその女の性格どうにかなんねぇ？オレ間違って手出しちゃいそう」
間違っても手は出さないで頼むから。
「神凪急用できた。三ツ谷ん所行きたい」
「そう言われると思ったから位置情報送ったー。そこから20分で着くよ」
「お見通しかよ気色悪」
「灰谷弟君そのまま南南西に10km進んだら焼却炉あるから燃えてくれてもいいんだよ」
「お前が燃えろ」
売り言葉に買い言葉。翔奏が生き生きしているように見えなくもないのでそのまま見守る。
「ところでさ黒脛、オレらの急用なんだと思う？」
と、脈絡もなくはいた兄からの質問。
「急用で隆の所行くんだろ……？服破れたとか？隆手芸部だし」
「ちげぇよアホか」
「そもそも三ツ谷が裁縫できることも知らねぇよ」
「え、あー……？」
そう頭を悩ませている間にも時間は過ぎていく。
「残念時間切れー。竜胆正解言ってやれ」
「大将からメールで伝言預かったから行ってくる」
イザナから伝言……隆に？何で？
「ちなみに何て？」
「気になったなら大将に聞けよ。そんじゃ」
「ちょ、もうちょい詳しく──」
自分の引き止めも虚しく、通話は呆気なく終了した。
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作者名：雨野夜都 | 作成日時：2021年11月28日 17時
