9話 ページ10
自分が好きか。
いいえ、大嫌いです。
自分は信用に値する人間か。
いいえ、信用も信頼もできません。
在りし日の、誰かとの、生産性のない問答。
ざり、ざり、と靴裏を引きずって大きな歩道橋を歩く。
建物の明かりは消え去り、静かな街を照らすのは月明かりのみ。
自分以外に人は誰もいない。正に独り。
「──────」
口ずさむのは幼い頃に聞いた童謡。
欄干に寄り掛かって空を眺める。
雲に覆われて星は見えない。ただの1つとして、輝くものは存在していない。
昔、ある人間に聞かれた。お前に大切な奴はいないのかと。
いないし、欲しいとも思わないと答えた。
自分のことを嫌ってくれる人間が好きだ。
自分と何の関わりもない他人が好きだ。
愛を与えられることもなければ、
期待をされることもなく、
信用もされず、信頼もされないから。
全部もたなければ辛い思いをすることもないし、想いを背負う必要もない。
そんな高尚なもの、自分には不釣り合いだ。
分かってる。
分かってる。
分かってる。
────────分かってる?
「……おもい」
また歩き出せば首から下げた飾りが揺れる。
からり。
からり。
乾いた音が辺りに響き渡った。
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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年8月24日 5時