42話 ページ43
「あの……三ツ谷君」
「んー?どうしたタケミっち」
「黒脛さん、どうして家庭科室出禁なんですか?さっきあの人来た時異様な雰囲気になってたし……」
部活の人達は帰り、教室内には最終調整をする為に残ったオレと三ツ谷君とペーやん君のみ。
三ツ谷君はオレの言葉にぴたりと特服を仕立てている手を止めた。
「そういやお前他校だから知らねぇのか」
「ペーやん君も何か知ってるんですか!?」
「オレもっつーか、この学校の人間は全員知ってる」
ペーやん君の言葉に絶句。
絶対どうでもいいことじゃねーじゃん!あの人適当過ぎない!?
「彼奴、家庭科部の奴とその彼氏と揉めたんだよ」
家庭科部の子とその彼氏と揉めた……。
「痴情のもつれ?」
「んなわけあるか。お前こんな時に冗談言うんだな」
呆れたようにペーやん君がオレを見る
「で、ですよね!じゃあどうして……」
「黒脛の風体見りゃ分かるだろ」
正直オレもよっぽどのことがなきゃ関わんねぇよ、とペーやん君。
「それって黒脛さん何も悪くないんじゃ?」
「Aだからっていう理由で突っかかる奴が多いんだよ」
三ツ谷君がぽつりと呟いた。
「目が合ったから、そこにいたから……絡まれた理由なんて挙げたらキリがねぇ。彼奴は何も悪くない」
でも、と三ツ谷君は話を続ける。
「決まってAに突っかかる奴は不幸な目にあう。それでも全部たまたま。偶然に偶然が重なっただけ。ただ部活の子の彼氏は……あー……」
途端に歯切れが悪くなる三ツ谷君にオレは首を傾げた。
「三ツ谷君?」
「死んだ」
音が消え去った教室。
聞こえてくるのは3人分の呼吸音のみ。
偶然。たまたま。
それでも──それでも。あの人を遠ざけるには、あまりにも十分過ぎる出来事。
「その後の部活の子とのやり取りでも……まぁ、色々あって……出禁にした」
「黒脛さんは……神様に、嫌われてるんですかね……」
「何言ってんだよタケミっち!冗談の次はポエムか?」
くすくす笑う三ツ谷君にオレは苦笑いしか返せない。
神様という存在がもしいるならば、彼の人は確実に神様に嫌われている。
どす黒い瞳を思い出す。
がらんどうで真っ暗な双眸は何を映しているのか。
果たしてあの人は幸せなのか。
絶望の中をさ迷っているのではないか。
永遠と続く暗闇に身を投げているのではないか。
────タケミっち君。
黒脛Aという人間がオレの心に巣食う。
その姿が脳裏から消えることは終ぞなかった。
311人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年8月24日 5時