38話 ページ39
10月31日。平日だが街は朝からハロウィンのせいで賑わっている。
そんな日に自分は悲しいかな、パソコンの画面とにらめっこをしていた。
時刻は多分昼頃。そう、平日の昼。つまりサボった。
隆もサボっているのでノーカン。今回ばかりは彼奴も怒れまい。
「説教する割にお前もサボるなんて人のこと言えないな」
画面に映る隆の顔をデコピンの要領で弾く。
「きーちゃんどう?見れてる?」
「お前には頭が上がらないよ。鮮明に見えてる」
お礼を言って頭を撫でれば翔奏は嬉しそうに飛び跳ねる。
「ほんと!?廃車場の監視カメラだったからハッキングするのは簡単だったんだけど、映像を鮮明にするのには苦労したんだよ!!お役に立ってる!?」
「立ってる立ってる。それはもうエジソン並に。今日のおやつはケーキワンホールにしよう」
「六本木のケーキ屋さんのタルト!!」
「またたっかいやつ……」
自分達のやり取りとは正反対に画面の向こうは殺伐としていた。
音は聞こえてこないが、人を殴ったり蹴ったりしている光景が計3台のパソコンの画面いっぱいに広がる。
どうやら今回の抗争は廃車場で行われているらしい。よくこんな場所見つけたなというのが率直な感想である。
見始めればなかなか面白いもので、翔奏に朝早くから無理矢理呼ばれたことへの不満は消え去る。
こっちではマイキー君と羽宮君が廃車の上で、そっちではドラケン君と半間君がやり合っている。
翔奏曰く、裏で色々と仕掛けているのは稀咲鉄太らしい。
稀咲君は何の目的でこんな面倒なことをしているんだか。
翔奏にこれまた無理矢理押し付けられた資料を片手にパソコンを眺める。
その翔奏といえば人の太ももを枕にして全編ドイツ語の医学書を読み始めていた。
お前今朝嬉々として抗争のこと調べてたよな?気分屋も程々にしろよ……1人ではしゃいでる自分がバカみたいじゃん。
その時、ある光景がパソコンに映し出される。
その光景に思わず自分は笑ってしまった。
「っはは、あは……ははは」
「きーちゃん笑うなんて珍しいね」
「くは、ふ……悪い悪い」
なるほど。だからこの前翔奏に断られた時にタケミっち君は焦ってたのか。
これが起こると予想して。
否、あれは予想というよりも確信に近かった。
「そりゃ焦るわな」
それにしても、君はとんだ親不孝者ならぬ友不孝者だ。
「そうだろ、羽宮君。友達は大事にしねぇとダメだぜ」
場地君を刺した羽宮君が映った画面を再度指で弾いた。
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作者名:雨野夜都 | 作成日時:2021年8月24日 5時