【東リべ】一般人と称するにはあまりにも目が死んでいる (ページ27)

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26話ページ27

「あ？」

恐ろしい程冷たい眼差し。

どろりとした闇が見え隠れする。

黒脛さんの地雷を踏んだのは明白だった。

「ごっ、ごめんなさ────」

「いつ翔奏を知った？彼奴のことは隆にも話したことはない。翔奏自身も殆ど家から出てない。翔奏を知ってる奴でろくな奴は見たことがない」

言え。言えタケミっち。

「翔奏に怪我させたら容赦しない」

マイキー君に殺される前に殺してしまおうか？

そう言って距離を詰めてきた黒脛さんはオレの首に手を掛ける。

有無を言わせない圧。

あの日見た闇を背負う姿よりも幾分も恐ろしく感じた。

怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

言葉。言葉を発しろ花垣武道。何か言え。言え！！動け！！

言わなきゃ本当に殺される。この人は確実に殺しにくる。

この人に、倫理も何も関係ない。

あまりの恐怖に涙が浮かぶ。

「泣いてちゃ何も解決しな────」

「きーちゃん？」

「はぇ……っ」

ぱっと首から手が離れると同時に、オレに向けられていた圧が消えた。

目の前に現れたのは少女。見た目からではいまいち年齢が分からない。

真っ黒な厚手のカーディガンに身を包んでいるのが印象的だった。

「翔奏……？何してるんだこんな時間にこんな所で」

「きーちゃんだ！！わぁわぁ！超超超偶然！私は姉貴から呼び出された帰り！」

場にそぐわない喜を多分に含んだ声色。

「連絡してくれれば迎え行った」

「姉貴の部下さんが送迎してくれたから大丈夫！」

「ならいいけど」

そこまで会話をすると翔奏さんはオレに目を向ける。

「きーちゃんその子誰？」

「……一応、知り合い。今話が終わったから一緒に帰る」

「いいの！？」

「いいよ」

黒脛さんの言葉に翔奏さんは跳んで喜びその腕に抱き着く。

「危ないから抱き着くな」

「きーちゃんいい匂いー！3日前に柔軟剤変えたよね！」

「窒息するから顔押し付けないでお嬢さん」

そのまま2人はオレのことなんか気にせずに歩き出した。

すると翔奏さんはある程度オレと距離が離れた辺りで唐突に此方を向く。

そして────。

「またね花垣武道君」

ニヒルに笑ってそう呟いたのだった。