12話 ページ13
「お前しばらく外に出んな」
「ほぁ？」
翔奏と武蔵祭りの約束をした次の日。
お馴染みの隆からまさかの外出禁止令が出された。
「もしかして自分が行けないからお前も行けない気分を味わえ方式？」
「ちげぇよ。お前オレのことなんだと思ってんだ」
お前にだけは性格悪いって言われたくない、となかなかの評価をいただいてしまう。
言い返すことなんてできず、代わりにしゃくりとコンビニで買った棒アイスを食べた。
生命を謳歌するセミの声に包まれた公園は自分達以外誰もいない。
夏休み期間中の昼間なら小さい子供達が大勢いるのだが、今日は如何せん異常に暑い。
我が子の熱中症を危惧した親御さん方が止めたのだろう。
凄くできた親御さんだ。その調子で子育て街道を突っ走れ。引き返してはならない。
「東卍がさ、内部分裂しかけたんだよ。マイキー派ドラケン派って」
「はぁ……？」
「予定より早く愛美愛主と揉めた時にパーが捕まったらしくて、それで」
「パー？」
じゃんけんのパーが捕まったって？それは一大事だ。これからはグーが無双する時代になるんだな任せろ。
「お前嘘だろ！？パーちんは流石に分かれよ！」
「あぁ、パーちん。ちん、まで言わなきゃ分からないよ」
林田君のことだと理解したのはあだ名がフルで出てきてからだった。
「そんでさ、タケミっちって奴がマイキーとドラケンの喧嘩止めてくれたんだ。マイキーとドラケンが仲直りして東卍内じゃパーが捕まったのはしょうがないって結論でまとまった」
「タケミっち……？まぁいいや。それで？」
「ただ、ペーやんが納得してねぇみたいで荒れてる。マイキー派だった奴らも何人か。お前最近マイキーとかドラケンとかとつるんでるから狙われるかもしれねぇ」
特に武蔵祭りの日は外に出るな。その日が元々愛美愛主と揉める日だったから、1番何かあっても可笑しくない。
「……ふぅん」
予定日より早くに揉めたのに予定日にまた抗争……？はて、どういうことだ翔奏？
忠告を続ける隆そっちのけで(決して深いとは言えない)思考の海に沈む。
────林良平って奴いるでしょ
────そいつとキヨマサって奴を使って色々起こすみたい
──────稀咲鉄太
あー、なるほど……？
ポンコツな脳みそで辿り着いた回答に1人で勝手に何となく納得する。
「──聞いてんのか！」
「いだっ！」
納得した直後、隆を放置していたツケが脳天に回ってきた。
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作者名：雨野夜都 | 作成日時：2021年8月24日 5時
