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苦しい胸の内2 ページ6

「あなたはもうたくさんの物を背負っているのに。
これ以上背負うというの?
警察庁のゼロに所属し全国の公安のトップに立つ男。バカね…私なんかのために」

 時刻は夕方になろうとしていた。
安室が目を覚ます。
ガバッ!と起き上がるとさくらと目があった。
「ありがとうございました」
さくらが掠れた声で礼を言った。
「スミマセン。僕まで寝落ちしてしまって…。
でも…やっと落ち着きましたね。目元の腫れもだいぶ良くなりましたよ」
そっと安室はさくらの目元に触れた。


 「どうしたら藤枝にレポート探しを諦めさせることが出来ますか?」
悲痛な面持ちでさくらは安室に問いかけた。

 方法は一つある。
エンジェルダストにガンを治す効果は無いと告げることだ。
だが、それはエミリーの死を宣告することと等しい。
藤枝が容易に受け入れるはずがない。
まして、レポートが見つかる前に藤枝にそれを伝えることは、組織への裏切り行為となる。

エミリーに残された時間は少ない。
残り僅かな時間をエミリーと過ごすことに使って欲しい。
さくらの気持ちは痛いほど分かる。
だが…。

 「今は方法がありません」
安室の口からは残酷な言葉しか出てこなかった。
もちろん、さくらも十分わかっていた。
分かってはいたが、その言葉は想像以上に重く心にのしかかった。




 夕食もそこそこに、さくらは一人でホテルの屋上に来ていた。
ホテルの屋上には植物が植えられ、ちょっとした庭園のようになっている。
高層階なので風が強い。
髪を押さえながらベンチに座る。
さくらは空を見上げた。

 離陸直後の飛行機が目の前を通過していく。
周りの照明のせいで、ほとんど星は見えなかった。
それでも、この空は赤井のところまで繋がっている。

 今頃工藤邸の窓から見ているだろうか?
流れゆくこの雲は米花町まで行くだろうか?
頬を撫でていったこの風は、彼(赤井)のところまで行くのかな…
そんなことをぼんやりと考えていた。

 少し冷たい風が強く吹いた。
さくらの涙も風と一緒に流れていった。

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設定タグ:名探偵コナン , 赤井秀一 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時

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