27.ペアリング ページ30
僕は今、家事が全く出来ないという友人に、掃除の仕方を教えている。
運命の時まで、最低でも2年はある。
その間は一緒に過ごすことになるのだから、家事の1つや2つは教えておいた方が良いとファウダーから言われた。
この“器”の記憶を頼りに、出来る限りのことを教えようと思ったのだが……。
「えっと……先に雑巾で拭くんだっけ?」
「そんな絞ってもいない雑巾で何を拭く気なんだい?部屋を水浸しにする気か君は」
全く出来ないどころか、壊滅的だった。
……掃除はインバース辺りがやっているため、教える必要はないので、掃除は諦め料理を教えることにする。
だが、これは僕にも教えられることは少ない。
この“器”の料理が、何故かすべて銅味になるからだ。
さすがに、彼女に銅味の料理を作る方法を教えるわけにもいかない。
そう思っていた。
「……この謎の紫色のドロドロはなんだい?」
「シチューです」
僕は目の前の物体を指差して聞く。
机の上に置かれた鍋の中に並々と入った紫色のドロドロとした液体。グツグツと音を立てて、赤や青と、色あざやかな食材が入っている。
「君はシチューを毒に変える魔法でも使ったのかい?」
「み……見た目はあれだけど、味はいいと思うよ?味見してみる?」
「僕を殺す気かい?」
質問を質問で返す。
そのシチューらしき液体は、ファウダーたちに差し入れとして持って行った。
その直後、医療室に何十人も運ばれて、新種の毒にやられたと騒ぎになったのは言うまでもないだろう。
不幸中の幸いというものか、死者が出ることはなかった。
そしてその日の夜。
いつもはベッドで寝ている彼女が、床で寝ている僕の隣で寝ていた。
「何で床で寝るんだい?ベッドの方が寝心地がいいだろう?」
「う〜ん……それもそうだけど、たまには床もいいかなぁって思ったんだ」
僕が来ているローブの袖で遊びながら、リュヌが言った。
そして何を思ったのか、懐から何かを取り出した。それは、あの日彼女が僕とお揃いで買ったと言う、三日月型の石がついた指輪だった。
「これ、キミには買った物って言ったけど……あれは嘘なんだ」
遠くでも見るような目で、彼女は言う。
まるで、昔を懐かしむように。
「指輪は、私が作ったんだ。いつかこの指輪もキミにあげるよ」
そう言うと、彼女は瞼を閉じ、寝てしまった。
翌朝、僕は彼女の寝相の悪さにより、顔を蹴られることになる。
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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時