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11_あなたの原点はなんですか1 ページ1

肌寒さに意識が浮上する。

ブランケットからはみ出した上半身が外気に冷やされ、それでいて腹回りは不思議と暖かい。布だけでは説明がつかない心地よさに目覚めを促されて、ゆるゆると瞼を開ける。薄暗く霞む視界の中で、とっくに燃やすものを失くした暖炉が炭だけを残して赤く点滅しているのが見える。

じっくり燻された木片の良い香りを吸いこみ、朝いちばんの大あくび。ソファから身を起こそうとして、なにやら引っかかりを感じて視線を下げる。

どうやら自分の片手がはるかに大きな手のひらに捕らわれているのを理解した頭が、驚きのままに声を上げさせなかったのを誉めたい。すぐ向こうには、腹に擦り寄るように布に半分はまり込んだキバナの寝顔が見える。今までにない至近距離に、さっきまでの眠気なんかあっという間に空の向こうに飛んで行ってしまった。

いつもは私に気を使ってくれてだろう、夜は早めに自室に引き上げてそのまま休んでいるのに、どうして。なんだか隠されていたものを見てしまった気持ちになって、思わず目をそらす。それでいて何も変わらない状況に、おそるおそる目の前の寝姿に目線を戻す。

器用にあぐらをかいた足の間にフライゴンを抱え込んで、もたれるように大きな体ごとソファに寄りかかっている。好奇心のままに忙しなく表情を変える空色の眼は今は閉じられ、太い眉毛も緩められて、薄く開いた唇から尖った歯を覗かせる様はどことなくあどけない。いつもは高く結われている髪が解かれて、若干くすぐったそうに首元に降ろされている。彼の子供の頃をついぞ知ることはないが、なんとなく寝顔はずっと変わっていないのだろうなあ、と想像する。


昨晩は、どう過ごしていたのだったか。暖炉の前のソファで本を読んでいて、いまいち集中できなくて全然進まなくて、そのうち眠たくなって。ドラパルトがもう寝よう、と擦り寄ってきて…その後は覚えていない。キバナは夜間見回りの次の日だからか、珍しく早めに帰ってくる予定だった。夕飯は何か美味しいものを買って帰るからそのまま待っていて、と言われた台詞を思い出す。…はたして、自分は待っていたとは言い難い。

11_02→



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設定タグ:キバナ , ポケモン剣盾 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/  
作成日時:2023年3月21日 20時

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