1_05 ページ5
黒々とした木々の合間から、件の見張り塔跡地が見えてくる。この高度で行けば、ちょうど塔屋が見える筈。かなり朽ちた外見は以前見たものと何ら変わりがない。はずだった。
塔屋の下の曲がった窓面に、かすかな明かりが灯っていた。
ゴーストポケモンの放つ燐光とは違う、暖色の照明のような。
「…こちらキバナ、最上階の窓部に明かりのようなものを視認。確認願います」
「ん…地上からは見えないな」
「ちょうど塔がひん曲がってる所の上なんで、上空からじゃないと見えないと思います。ヘイ、ロトム」
自分のスマホロトムを片手で呼び出し、カブさんのスマホに窓を拡大したビデオを同期してもらう。
「人工的なランプに見えるね…揺れているのは、小型ポケモンがいるのかもしれない。ぼくは一旦止まろう、塔から見えない箇所から徒歩で近づく。キバナ君はそのままもう少し近づけるかい」
「若しくは巷で噂のゴースト、ですかね。オレは屋上までそのまま行きます、そこから入れるかもしれない。しっかりした作りだったら、そのままフライゴンを迎えによこしますから、カブさん乗ってきてください」
「…上空からは君に分があるか、了解。崩落の危険があったら無理に入らずに帰還すること、いいね」
了承の返事をして高度を上げ、塔の屋上全体を見渡す。
地上土台部に比べてこちらは古びてはいるが、過度に劣化しているようには見えない。そろり降り立ってみても、軽く足踏みしてみても石畳は振動もせず、難なくキバナの体重を受け止めている。
「ん、強度は大丈夫そうだ。じゃあフライゴン、カブさんを頼むな」
ふるる、と嬉しそうに頬ずりをして、フライゴンはふもとの暗闇まで音もなく滑空していく。余韻のねじれ風を感じながら腰のハイパーボールをなでつければ、フライゴン以外の皆から振動で反応が返ってくる。
昼間のトレーニングバトルに続いて、こうして夜まで捜索に付き合ってくれるパートナー達には感謝しかない。リーグのオフシーズンである今のうちに、彼らには休養と共にしっかりメンテナンスしなければ。
「みんなも頼むな。出してやれるかどうかは分からないが。…はてさて、迷子のドラメシヤか、はたまたデュラハンとでも相まみえますかね」
外から見た様子では、すぐ下の空間が明かりのあった部屋のはず。スマホロトムにサイレントモードとライト点灯を指示しながら、先行して階段に足をかける。
84人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2022年10月1日 21時