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愚痴ついでに、何枚目かのシーフードピザ片手にアイスティーを飲み干す。ナックル星付レストラン常連のピッツェリアは、先代同士が仲が良かったことも相まって、今でも特別にジムまで配達手配をしてくれる大変ありがたい存在だ。繁忙期は特に、これのおかげで乗り切れた時も多々ある。
…これ、Aに持っていったら喜ぶかな。
「あの老舗ピッツェリア店、いつも満員なのに優先的にジムの予約回してくれて有り難いです」
「今度なんかお礼持ってくかな、あそこの店主に」
「また次の注文が大盛になって帰ってきますね」
「キリがねぇ〜」
長年木の実とその加工品、自家製のパン程度で暮らしてきたらしいAは、食べ物が一番早く目につくギャップだった。サンドイッチ程度の簡単で素材が目に見えるものは食べるが、加工品には警戒して手を付けない。
ピザなら、パンに食材を載せて焼いたものだし、彼女も食べられるのではないだろうか。アツアツでないともったいないから、いつの日か、彼女がこの街に来てくれた時に。
そこまで考えて、随分自分は彼女に気に入られようとしているな、と考えた。恒例になりつつある小さな手土産も、戸惑いながら返される返礼代わりのささやかなお菓子も、楽しみに思っている自分がいる。
珍しいドラゴンポケモンの保護主として?言語学的な貴重さ?
おそらく、両方。だが、何となくそれだけではない気がした。
***
「ハイ、A、ご機嫌いかが…あれ、いねえ」
快晴の日、通算4度目の来訪となる、見張り塔跡地内の部屋。到着を告げるべく、開け放してある扉を軽く叩く。塔の主は不在で、いつも整頓されている居室の中にはドラメシヤたちだけ。
「今日も邪魔するな、坊やたち」
分かっているのかただの応答か、沢山の鳴き声が四方八方からとんでくる。家主の不在は初めてだが、時間は決めていないものの、今日の太陽が高くなった時に、とは伝えてあるので、そのうち戻ってくるだろう。
重く大きい鞄にご機嫌斜めなフライゴンをなだめながら、トレードマークのバンダナを外して、彼女の定位置である木椅子に腰かける。机の上には読みかけの本が開かれている。ナックルにあったらすぐさま重要資料のフダがつけられそうな、掠れた文字群。
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2022年10月1日 21時