押せば成る【影山飛雄】【４】

３７- 押せば成る ページ36

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春高まであと2週間前後となった日、学校は冬休みに入ろうとしていた。



「ねえ影山くん」

「はい」

「今日帰り、ちょっと駅に寄らない？」



放課後の部活が始まる直前、軽くストレッチをしていた影山くんに話しかける。

私の目を見てきょとんとした彼は「駅？」と繰り返すように呟いた。



「そう、駅」

「なんかあるんスか？」

「うん、なんかある。春高前だしゆっくりはできないけど、ちょっとだけ私に時間ちょうだい！ね？」

「俺はいいですけど」

「ほんと？ありがと」



当然だという風に頷いてくれる影山くんに笑顔でお礼を言い、隣に座る。

そして床に座ってぐっぐっと柔軟をしている彼に「手伝ってあげようか？」と返すと、「遠慮します」とこちらは丁重に断られた。




☆




「お疲れー」

「お疲れ」

「じゃーな影山！と、お疲れ様ですAさん！」



部活終了後、部員たちと労いながら別れを告げる。

私と影山くんはいつも通り2人横に並び、今日は普段と違う道を歩き出した。



「珍しいっすね。寄り道とか」

「そうだっけ？そうかも」

「………(なんかキラキラしてんな、眩しい…)」

「はは、もうじきクリスマスだもん。イルミネーションくらいあるよ」



周りを見て鬱陶しそうな顔をする影山くんを見て、言葉には出さずとも伝わってきたことに軽く笑う。

イベントを目前とした駅前の通りは目に映るもの全てが賑やかで、人々の心を浮つかせている。


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