押せば成る【影山飛雄】

・ ページ9

.



「あ、うちここだから」



自分の家が見える位置までくると、隣に並んでいた影山くんに向き直り、立ち止まる。



「あ、はい」

「送ってくれてありがとね。あと、他にもいろいろ」

「うス」



他にもというのはもちろんおもに告白のことだが、
ここはあえて濁しておいた。

「じゃあ」と影山くんに背を向けて歩き出そうとすると、右手が掴まれる感触がしてぐいっとそのまま引っ張られる。



「うわっ！？」

「…っあの！俺！諦めたりしないんで！！つーかこっからだと思ってます！！」

「いや、ちょ…ここ実家の真ん前…」



影山くんの両手で私の両肩を掴まれ、がくがくと揺らされるながら大声で決意表明される。

はたから見たらどういう状況に見えるんだろう、これ。

そう思うとなんだかまた笑えてきて、そしたら「なに笑ってんすか！」とまた怒られてしまった。





☆☆☆





ここ最近で、1番濃い1日だった。

今までも告白された経験はそれなりにあったが、それは全て仲の良い男性ばかりで。

私は自分を鈍感だと思ったことはない。
自分に好意を向けている人物は、結構早々と気づくほうだった。

そんな私が、告白されて1番驚いたのが影山くん。

いつ、どの瞬間に好きになられたのかはよくわからないが、好意を向けられるというのは相手がたとえあまり話さない後輩であれ嬉しい。



(これを機会に、仲良くなれるといいけどね)

付き合うとはまた別の話だけれど。



なーんて、能天気に考えていた私は

次の日から、日常が変わることを今は知らない。



.

３- 度が過ぎれば怒る→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す