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Aが助手席に乗り込んだのを確認し、車のエンジンを掛けながらカカシは先日の事件の事を思い出していた。
Aと組まされると聞いた時には、外れくじを引かされた気分になっていたカカシだったが、Aを良く知る人間がこぞってAを頼むと言ってきた。
そしてそのどれもが、決して嫌味からくるものではなく愛情が籠っている事に気付けない程己の目は曇っていない。
実際関わってみると、Aは警察署内で囁かれている”変人”としての片鱗は確かにあったが、人柄は悪くないとカカシは思った。
実直で純粋
怒りもすれば笑いもする普通の人間だ
ただ、絶対記憶という特殊な能力に加えて、相手の感情を読み取る事や含み言葉を理解する事が極端に不得手だと言う事。
人間ならば誰でも持っている、弱点
それがAの場合、顕著に表れているだけ
カカシにとってはそういう認識に留まった。
そして彼女自身の言葉を借りるなら、インナースペースと呼ぶ限られた空間で敬語を使わない素のAは
普通に可愛いとそう思った
「カカシ?」
「………何?」
運転中静かだったAにそんな思考を遮られるように名前を呼ばれ、内心焦ったカカシだったが、冷静を装い返事を返した。
「ミナト班長は首吊り自 殺の現場検証とおっしゃいましたが、あの写真からして彼女は自 殺ではないと推測されます。」
「どうして?」
「それは……現場を見て確証を得てから説明します。」
「……あぁ、そう。」
じゃあ何で今言ったのよと突っ込みたい所ではあったが、カカシはそう答えるだけに留めた。
今ここでAがそれを言葉にしたのは、『何か気づいた事があればその都度ちゃんと報告して』と、先の事件後の飲みの場でカカシがAに言った事を守っているのだと気付いたからだ。
「彼女が自 殺でない以上、他殺……つまり殺人事件と言う事になりますが……その場合も捜査は私達が請け負うのでしょうか?」
「さて、どーだかねぇ……ま、取り敢えず現場見てからでしょ。」
辿り着いた事件現場である郊外のアパートには既に野次馬が集まっており、テレビ局の取材陣の姿まで見えた。
こういう時の彼等の嗅覚はどうなっているのかと時折うんざりする。
人の死を嗅ぎ付けるハイエナの様な彼等はそれが生業だとしても、父を亡くした当時を思い起こせばカカシは些か嫌悪感を覚えてしまう。
だがそんな感傷に浸る暇など今は無い。
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テン(プロフ) - ハルさん» ハルさんいつもいつも本当にありがとうございます!もー!ハルさんに誉めてもらえたらそれだけでやる気でます!(>_<)更新ゆっくりめで申し訳ありませんが、ハルさんの作品と言葉を活力になんとか頑張りますっ!苦笑 (2021年2月16日 0時) (レス) id: a5f75c2f95 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - テンさん…どうしたらこんな素晴らしいお話が思いつくんですか( ; ; )続きが気になって仕方ありません!!もう一つの作品もそうだし、やっぱりテンさんの書くお話大好きですー( ; ; )中々忙しいかと思いますが、頑張ってくださいね!!応援してます♪ (2021年2月15日 8時) (レス) id: 8c65bc0e51 (このIDを非表示/違反報告)
テン(プロフ) - ハルさん» いや……もう……ハルさんの語彙力を私に分けてください!(T-T)取り敢えず、少しずつでも更新出来るように頑張ります(*^^*) (2021年1月23日 1時) (レス) id: a5f75c2f95 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - テンさん、新作おめでとうございます!相変わらずの文才で惚れ惚れしてしまいます…お話の続きもとっても気になります(*^^*)続き、楽しみにしてますね〜!! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 8c65bc0e51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テン | 作成日時:2021年1月21日 22時