4 ページ5
「早くしろ!人質が死んでも良いのか?!」
怒鳴り付ける声に怯えながら用意された袋のなかに札束を詰め込むのは、銃口を向けられている銀行員。
そんな様子を千住Aは、ただぼんやりと眺めていた。
啜り泣く声
怯える眼
震える手足
目に映るものが全て
今のAにはどうでもよかった
「あの。少しよろしいでしょうか?」
徐に立ち上がったAは、肩の辺りまで伸びた栗色の髪を耳に掛けながら先程から怒号を飛ばし息巻いている男を見上げた。
低めの身長に華奢な身体付き。
決して大きいとは言えない胸の膨らみは、目下本人の悩みの種だったりするわけだが今はそれはどうでもいい。
童顔な顔付きとくっきりとした二重の大きな瞳
その見た目のせいで中学生にすら間違われることもある。
そんなAが立ち上がって声を掛けたので、強盗犯の男達は苛立ちながらも余裕の表情を浮かべている。
「なんだぁ?お嬢ちゃん!大人しく座ってろっ!」
「………現在、時刻は9時45分。最低でも10時には職場に行かないと本気で……怒鳴られてしまいます。」
「はぁ?!ガキが何言ってやがんだっ!」
「私は25歳です。成人しているので、その表現は不適切かと思われます。」
特段、慌てることもなくきっぱりと静かに言ったAに、男は銃口を向けていた銀行員から札束の入った袋を乱雑に奪い取るとそれを肩に担いだままAを睨みつけた。
「だからどーした!何っなんだお前は!!」
「私ですか?私は……警察です。どうやら、遅刻は免れなさそうなので……取り敢えず、強盗未遂及び、銃刀法違反の現行犯として貴殿方を逮捕しても宜しいですか?」
「……はぁ?!」
犯人の三人組だけではない
共に人質として捉えられていた人達までもが目の前の小首を傾げた小柄な女が、頭のおかしな事を言い出したと言わんばかりの目をAに向けている。
だがAはそんな事など一切お構いなしに、唐突に駆け出すと、中心で銃を握っていた男の間合いへと滑り込む。
男が呆気に取られたその刹那、回し蹴り一発で男を伸してしまったAは、気絶させた男の手元から取り上げた拳銃のホルダーを引き抜き、手慣れた手付きで銃弾を取り出すと自身のポケットに、まるで飴玉でも仕舞い込む様に突っ込んだ。
42人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
テン(プロフ) - ハルさん» ハルさんいつもいつも本当にありがとうございます!もー!ハルさんに誉めてもらえたらそれだけでやる気でます!(>_<)更新ゆっくりめで申し訳ありませんが、ハルさんの作品と言葉を活力になんとか頑張りますっ!苦笑 (2021年2月16日 0時) (レス) id: a5f75c2f95 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - テンさん…どうしたらこんな素晴らしいお話が思いつくんですか( ; ; )続きが気になって仕方ありません!!もう一つの作品もそうだし、やっぱりテンさんの書くお話大好きですー( ; ; )中々忙しいかと思いますが、頑張ってくださいね!!応援してます♪ (2021年2月15日 8時) (レス) id: 8c65bc0e51 (このIDを非表示/違反報告)
テン(プロフ) - ハルさん» いや……もう……ハルさんの語彙力を私に分けてください!(T-T)取り敢えず、少しずつでも更新出来るように頑張ります(*^^*) (2021年1月23日 1時) (レス) id: a5f75c2f95 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - テンさん、新作おめでとうございます!相変わらずの文才で惚れ惚れしてしまいます…お話の続きもとっても気になります(*^^*)続き、楽しみにしてますね〜!! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 8c65bc0e51 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:テン | 作成日時:2021年1月21日 22時