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「忘れない?」
「ああ、見聞きしたもん全部だ。医者にはアスペルガー症候群だとか、サヴァン症候群だとか言われたらしいが、未だよく解らないんだと。一瞬で頭に刻まれた記憶は一生、お嬢の中から消えてなくならない。消しちまいたい様な嫌な記憶でも……だ。」
シカクの声に含みがあるのを感じたカカシは再びAに視線を向けた。
さっきの『全て覚えている』というのは文字通り、”全て”なのかとカカシは納得する一方で、それは悲惨な能力だと目を伏せた。
自身が、もしも同じ様な能力を持っていたらと思うと……ゾッとする。
あの蒸し暑い夏の日―
親友と共に幼馴染みの遺体を発見した時の事は
今でもカカシの脳裏に鮮明に浮かぶ
それでも、月日を重ねるほどに曖昧になってきている記憶にほんの少し安堵してしまう自分が居るのも事実。
この仕事に就いてからどんなに惨い殺害現場をみても、1ヶ月も経てば過去となり薄れていく
だが全てを覚えているAにはそれが無い
「……地獄、ですね。」
「ん?あぁ……俺もそう思ったから、刑事課で色々役立ってくれてたアイツの処遇に悩んで、遺体と関わらない部署なんかに送り出したりしたんだけどよォ……あーんな感じなもんで。」
紫煙を吐き出しながらクイッと顎でAを指し示したシカクの様子に再びAに目を向けたカカシはギョッとした。
無表情のままのAと対照的に怒りの色を露にした検視官の男が、Aの胸倉を掴んでいたからだ。
面倒事は御免だと思いながらも、カカシは二人の間に身を滑り込ませると男のその腕を掴んで力を込めた。
「ちょっと待って。多分、いや絶対。コイツが失礼な事言ったんだろうけど……男が女に手をあげるってのは……どうなの?」
睨みをきかせてそう言えば、男はAを睨んだまま乱雑にAを離してカカシに声を掛ける。
「あんた……コイツの上司か?ならちゃんと躾とけ!俺達の仕事の邪魔をすんじゃねぇよ!馬鹿にしやがって!」
声を荒げる男に対して、Aはあくまでも静かな声で小首を傾げて襟元を正しながら言葉を放つ
「馬鹿になどしてません。間違った見解を臆測で述べるのはやめた方が良いのではないですか?と進言しただけです。」
「間違った……見解って?」
男の腕を掴んだままAに視線を向けたカカシの問いに、Aはカカシを見上げた。
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テン(プロフ) - ハルさん» ハルさんいつもいつも本当にありがとうございます!もー!ハルさんに誉めてもらえたらそれだけでやる気でます!(>_<)更新ゆっくりめで申し訳ありませんが、ハルさんの作品と言葉を活力になんとか頑張りますっ!苦笑 (2021年2月16日 0時) (レス) id: a5f75c2f95 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - テンさん…どうしたらこんな素晴らしいお話が思いつくんですか( ; ; )続きが気になって仕方ありません!!もう一つの作品もそうだし、やっぱりテンさんの書くお話大好きですー( ; ; )中々忙しいかと思いますが、頑張ってくださいね!!応援してます♪ (2021年2月15日 8時) (レス) id: 8c65bc0e51 (このIDを非表示/違反報告)
テン(プロフ) - ハルさん» いや……もう……ハルさんの語彙力を私に分けてください!(T-T)取り敢えず、少しずつでも更新出来るように頑張ります(*^^*) (2021年1月23日 1時) (レス) id: a5f75c2f95 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - テンさん、新作おめでとうございます!相変わらずの文才で惚れ惚れしてしまいます…お話の続きもとっても気になります(*^^*)続き、楽しみにしてますね〜!! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 8c65bc0e51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テン | 作成日時:2021年1月21日 22時