◎うらたぬき*Don't look up!(零生) ページ1
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「 なぁ、どこ見て歩いてんの 」
「 あ、ごめんなさい… 」
声に気付いて見上げていた顔をぱっと前に戻すと、私のことを迷惑そうに見つめる目。
慌てて端に寄ってぺこりと頭を下げるも、そこからその人は動く様子はなかった。
( ーーーえっと…、同じクラスの浦田くん…だよね、)
そっと彼から目を逸らしながら、自分の中で答え合わせをする。一度も話した事無いし、なんなら席だってたいして近くも無い。クラスがただ一緒ってだけの男の子。
それでも、女子からきゃあきゃあ言われてるおかげで名前と顔だけはちゃんと知っていた。
何故か私を見つめて動かないその人に、曖昧な笑顔を浮かべて私はそそくさと歩き出す。
そうだ、私は早く屋上に行きたかったんだ。
同じクラスのほぼ知らない男子のことなんて、別に考えることは無い。きっと、あの人の中で なんか見た事あるけどこいつ誰だっけ?みたいな考えが巡っていて見つめられていたに違いない。……そう、思っていたのに。
私の足音に続いてる、聞こえるはずのない足音。
何?ホラー?と恐る恐る振り返ってみると、綺麗な翠の眼とがっつりと視線がぶつかる。
「 えっと…なんですか 」
「 俺、どこ見て歩いてんのって聞いたんだけど 」
「 …は?いやだから謝りましたよね… 」
「 俺が欲しかったのは謝罪じゃなくて質問の答えだけど 」
「 はい? 」
何を言ってるんだろう、この人は。
ぶつかりそうになったから、嫌味でどこ見て歩いてんの?と聞いてきたんじゃないのだろうか。それに対しての答えは“すみません”で合っているだろう。間違いなく。
先程の申し訳ない気持ちから一転、何だこの人という気持ちが強くなり、はぁ?という気持ちで彼を見る。
そんな表情の私を見て、何故かふっと笑った彼は、「めちゃくちゃ意味わかんないって顔してる」と。
「 いつも上見て歩いてるよね、なんでか気になって 」
「 っはぁ!? なにそれ!いつも見てたってこと?…きっしょ!! 」
「 はぁ!? ちがっ… 」
「 そういうことでしょ!絶対答えないからもう着いてこないで! 」
「 なっ、おい、待てって!! 」
結局言い合いは目的地に着いても続いていて、私はその日初めて、屋上に着いても上を見上げることなく過ごした。
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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