序章 はじまりの花 ページ3
───黄色い花びらが風に舞い踊っていた。
手をのばして、踊り広がる香りごといっしょに捕まえたくなった。掴めたのは虚空だった。
菜の花たちは、一面を黄色く埋め尽くすほど咲いているのに。あの子の手には、いっぱいの花びらがのせられているというのに。幾多の花びらのほんの一枚すらも、すりぬけていくだけでこの手に触れていかない。わたしは唇を尖らせた。春が逃げていく。
そんな呟きをひろった様子の彼女は、手のひらいっぱいの花びらを舞い上げた。見向きもしなかった彩りたちが頭上でうず巻いて、つむじからつま先にかけてくっついた。掴めなかった香りが、細胞の中まで浸透していくようにわたしの中で広がった。視界はすっかり黄色だ。視覚と嗅覚への強い主張に、頭が混乱する。なんだかくらくらしてきた。
軽やかでたのしそうな笑い声は、菜の花人間になったわたしに向けられているものだ。野に咲く一面の菜の花たちよりも、まぶしく明るく染め上げるような笑顔がまぶたの裏に浮かんだ。
『ほら、これでいいやんね！』
そばで聞こえる声。目もあやな色あいと濃厚な香りの攻撃を今もなお受け続けているわたしは、ゆらゆらと腕を伸ばしてみた。いい匂いがする、なんて間延びした感想が返ってきた。
首を動かす。返事をしようと思った。視界をさえぎる花びらたち、口を開けたならその中にでも侵入してきそうな花びらたちをぬぐった。
そして視界は拭われた。ゆめは拭われた。
.
01→←第1部 The Beginning of Destiny
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
見卯＊..+*(プロフ) - 宮野冬姫さん» お返事遅れてごめんなさい🙇♀️ ヤム・ハ・メラハの件については修正を入れて姿を消していますが、そのうちまた出てくると思います。関連は薄いですが、その時は葉王に思いを馳せながら読んで頂けると嬉しいです......☺️ (2022年9月7日 20時) (
レス) id: e1b9a46973 (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 今気づいたけど、葉王って……ﾌﾟｰｸｽｸｽ← (2022年8月24日 15時) (レス) @page24 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - もちろんイナズマイレブンシリーズについても……グヘヘ(( (2022年8月24日 15時) (レス) @page24 id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - 語り合いたいですぅ！！ (2022年8月24日 15時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
宮野冬姫(プロフ) - そうだったんですか！マギを知ってるなんてメチャクチャ嬉しい！！！ (2022年8月24日 15時) (レス) id: 09433d1ffe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：見卯＊..+* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/miumiu01/
作成日時：2022年7月19日 20時
