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子鳥の囀りだなんてものが聞こえる時間はとうに過ぎているであろう。カーテンからは眩しい程の日差しが差し込んでおり、ベッドからゆっくりと身体を起こす。
ぼうっとしていた頭はその日差しから叩き起され、ベッドの上に膨らみに目をやる。少しの沈黙と、少しだけの頭の回転の後に大声を出す。
「ああぁぁ!?A!?」
「ん…あ、志麻くん」
「何でここにおるん!?」
「いや、志麻くんが………」
「俺なんかやらかした!?えっすまん!」
「いやいや、何もしてないし大丈夫。朝ごはん…って時間よりお昼ご飯の時間だけど何か食べる?」
ベッドの端に置いてあるデジタル時計に目をやれば、十二時を過ぎていた。
昨日、と言うより今日飲んでいたままの服装で俺のベッドに寝ていたAはいつもの一つに結んでいる髪が解けており、雰囲気がガラリと変わっていた。
普段ならばバリバリのキャリアウーマンのような見た目であるが、今では大人の女性であるという雰囲気が出ていた。
「昼ご飯…作ってくれるん?」
「志麻くんの家に何かある?」
「………冷凍の炒飯」
「分かった。普段料理してる?」
「してへんなぁ」
「お風呂貸して。お風呂入って材料買ってくる」
相も変わらずあまり顔の表情が変わらない事には普段と一緒であった。表情が変わる時はコロコロと面白い程に変わると言うのに、変わらない時は全く変わらない。
一気にAが捲し立てて来るもので、何が何か分からずにおう、と返事をしたがまずかった。
一人の女に自分の家の風呂を貸すだなんて俺は何と言う事をしているのか。
「はあぁぁぁぁ……」
大きな大きな溜め息を吐きながら自分の頭を抱える。彼女は立派な大人であるにも関わらずに何故俺は風呂を貸した。と言うより、それ以前の問題がある。俺は同じベッドで寝てしまった。今思えば馬鹿では無いのかと思う。
「志麻くーん!!」
「はっ、はぁーい!」
風呂場から大きな声が聞こえて来たので慌てて風呂場に走って行き、扉一枚越しに会話をする。
(待て待て待て待て。色々とヤバい。ヤバすぎるだろ)
「何か服貸して!ジャージとか!Tシャツとか!あと私の鞄を脱衣所に置いといて!」
「お、おう…」
Aの鞄をそのまま脱衣所に置き、クローゼットのある部屋から真っ白なTシャツを引っ張り出す。
風呂から上がったAの少しダボッとしたTシャツに、自分で持ってきていたであろうショートパンツに俺はまんまと悩殺されてしまった。
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